流石、一番隊隊長は手も早ぇぜ!

 

多分、あの時の俺は頭がどうにかしてたに違いねぇ、
じゃなきゃコイツ()に手前の服を貸す、
だなんて妙ちくりんな考えは浮かんで来ねぇだろうし、
仮にコイツ()がその服を(要は俺の服を)着たとして、
その後の展開は容易に想像出来ただろぃ。
この訳が分からねぇ女()のせいで どうやらおつむまでいかれちまったようだ。
……最悪だよぃ。


「何だマルコ!
手前ちっとも姿を見せねぇと思ってたら、そういう事か!」
流石、一番隊隊長は手も早ぇぜ!
「……」


こうなる事は火を見るより明らかだったはずなのに、
俺は……俺は一体何を……


「ねぇ、顔を赤くしてるとこ悪いんだけどさ」
「してねぇよぃ!」
「早く動かないとギャラリー、増えるだけなんじゃないの?」


で、この女な。何だコイツ。


「ていうかさぁ、別に童貞なワケでもなし、
気にする事とかなくない?」
「……」
「えっ?マルコ、もしかして……?」
「お前、ちったぁ黙れよぃ」
「いや、もしそうだったら、って言うか、
気にしてたら悪いと思って」
「違ぇよぃ!」
「でしょうねー」


昼間っから下ネタ全開の女の言う事を一々真に受けていればキリがねぇ。
何だかんだと冷やかして来るギャラリーを無視しながら先へ進む事にした。
確かに、俺が逆の立場なら、盛大に冷やかすよぃ。


「そんなに嫌なら、貸さなきゃよかったのに」
「布っきれなんか着せられるかよぃ」
「優っさしぃ」
「頼むから、少しの間だけ黙ってろぃ……」
「はーい」


と返事をした直後に遠目に確認出来た海王類に気を取られ、
あれは何だと騒ぎだすような女の言う事なんて信用出来ねぇよぃ。









「ほぅ……お前が例の女か」
「……!!(デカ!!)」
「何だ?お前ら、似たような恰好しやがって。
もう、そんな仲か」
「違ぇよぃ」
「グララララ!」
「(笑った!白ひげジョーク!?)」
「名前は何だ、お前」
「(えっ?何の前触れもないんですけど……!)
、と言います……」
「そうか、。空から降って来るなんて、
随分粋な登場をしたそうじゃぁねぇか。
目的も特にねぇ、素性も分からねぇ―――――」
「……(返す言葉がない……)」
「おい、マルコ。面倒を見てやれ」
「……親父!?」
「話を聞けば、お前が受け止めたらしいじゃねぇか。
この広い海の中、コイツはお前の所に落ちて来たんだぜ、
素晴らしいじゃあねぇか」
「けど、コイツは何も出来やしねぇよぃ」
「(……あれ?何でばれてんの?)」
「俺たちの元に来たって事は、何かあるんじゃあねぇか?
そんな気がするんだよ」
「……分かったよぃ」


えぇっと、こちらの意向は無視ですかーなんて、口が裂けても言えない。
ていうか、これ、やっぱり夢じゃないの?


「おい、
「はい?(やっべ、全然聞いてなかった!)」
「見たとこ、ひょろっとして力もなさそうだが、
お前、何が出来るんだよぃ」
「何、って……
(やっぱ、こんな流れになるよねー?面接みたい……)」
「戦えるのか、戦えねぇのか、まずはそこからだな。
まぁ、戦えるとは思っちゃいねぇが……
お前、その様子じゃロクに料理も出来やしねぇだろぃ」


コイツ、人の事を何だと思ってるの……?
(確かに料理なんて数年してませんけど!)
あっ、ゴメン。マルコの事、こいつとか言っちゃった。
能力者でもないし(まあ、当然だけど)
(ていうか夢なら、何かしらの能力者っていう設定でよくない?)
格闘技の経験もないし―――――


「話し相手、くらいにはなれるんじゃないかなって思います」
「要らねぇよぃ」
「他には何も出来ないと思うんですけどー」
「……これから教えるよぃ」
「何かエロい」
「お前は、性根から叩きなおさなきゃなんねぇみたいだな」


白ひげの目前で言い合っていれば、何が面白いのか彼が大声で笑い出すものだから、
全身が痺れるような衝撃を浴び(これはきっと音波とかに近い攻撃だと思う)
思わずマルコの袖を掴んだ。
悪気はなかったというのに、彼が酷く狼狽するもので、
次に似たような場面に遭遇する時には抱きついてやろうと思った。

はい。ようやく仲間公認。
白ひげを笑わせてみました。