カツアゲとかさ、そういうのになるの……?

 

わけが分からない展開っていうのは、
第三者が関与してたら、意外と起こる事態だと思ってはいたわけですよ。
少なくとも、あたしの中ではわけが分からないだけで、
他の人からしてみたら、そうでもないとかさ、まぁ、よくあるよね。
……あるよね?


そもそも、この世界に来てからというもの、
想定の範囲外なんて出来事は多々、多々ありすぎてるわけで、
まぁ、ほら。
今更、騒ぎ立てる事でもないかなって―――――


「おい」
「……(こういうのって、向こうの世界でもよくあるよね)」
「何々だよ、手前は」
「(カツアゲとかさ、そういうのになるの……?)」
「何とか言いやがれ」


簡単に言えば、ユースタス・キッドに絡まれているわけなんですが、
何かもう笑えてくるわ。何をしてるの、あたし……。
そもそも、買い出し部隊に付いて回って、
何か付き合うという契約さえあれば異様に心が広くなるらしいマルコ
(これは、マルコじゃなくてサッチ情報だから信憑性はあるんじゃない?)に一言告げて、
街に付いてきたらこの有り様ですよ。
あらら、これは怒られるわ。


目前のキッドはそこらのチンピラ宜しく、
非常に近い距離であたしを見てるんだよね……。
あらー化粧、上手!えぇ?不自然なほど上手くない?
発色のいい化粧品、使ってんなぁ……。


「何をやってるんだ、キッド」
「(うお!キラー!)」
「あ?いや、この女が―――――」
「ナンパか?」
「違ぇよ!」
「なら、何をしてるんだ」
「ねぇ、そのルージュ、どこの?」
「!?」
「すっごい発色、よくない?」


何、こいつ。
こんなに発色がいいって事は、
口唇の色自体が薄いピンクとかそういう事?
さっきから散々喋ってるけど、全然色落ちしてないし、
やっぱりいい口紅使ってんだろうなぁ。
あたし、こっちの世界に来てから、


お気に入りの化粧品なんて見つけきれなかったし、
そもそも大衆向けのメーカーが何なのかも分からない有り様だし、
まぁ、ここいらでいい感じの化粧品をゲット出来たらいいなぁっていうか、
買い出しに付いて来た目的はそれだしね。


「何を言ってやがる……」
「え?」
「人の顔見て、でけぇ声で名前を叫んだかと思えば親しげに…手前は俺の知り合いか!?」
「(ふ、普通に突っ込んできたよ!新感覚!)いや、初対面だけど」
「だったら、親しげに話しかけてくるんじゃねぇよ!!」
「いや、もうここまで話してもよくない?」


そういえば彼は恐れられていただとか、そんな事を今更思い出した。
でもなあ。日がなマルコ達と一緒にいるから、怖いとかって感情はないんだよね、実際。
まぁ、彼らが海賊らしさを微塵も見せてこないからだとは思うけど…。


この野郎と言わんばかりのキッドのすぐ後には、
こちらを興味深そうに見つめているキラーがいて、
むしろその仮面の中身を知りたいと思っていれば、
意図せずとも見つめている形になったのだろう。


表情が分からないままどうしたとキラーが言うものだから、
何故かこちらには畏まり、いえ、どうもしてませんがと言えば、
お前のその態度の変化は何事なのかと、キッドが一人ヒートアップ。
そのテンションに驚きつつも、あえてのキラーに対してだけ畏まる戦法(…?)
を駆使していれば、業を煮やしたキッドがふざけるな等と
捨て台詞を吐きながらどこぞへ消えていった。
化粧品の話は一つとして聞けなかった。














そもそも、どうしてあの馬鹿()が
厄介ごとに巻き込まれるのかを考えていたわけだ。
さきほど帰ってきたあの馬鹿()は、
開口一番に疲れたと言い、さっさと眠ってしまった。
どういう事だよぃ。
まぁ寝てるのは俺の部屋の俺のベッドなんだけどな…。
それこそどういうつもりだ。


眠い眠いと口走りながら俺の部屋に入っていくを発見し、
おい待てこの馬鹿と声をかけようとした瞬間、背後から部下が名を呼ぶ。
何だよぃ。振り返れば、買出し部隊の一人がいた。
我ながら、よくない行為だと知ってはいたが、
まぁ、の様子なんてものを報告するように言っていたわけだ。


あいつが買い出しについて行きてぇらしいが、
何かしらの厄介ごとを起こすに違いねぇ。
何れにしても、俺に報告しろぃ。


そんな事を一番隊隊長に頼まれれば、報告しないわけにもいかず、
こうしてやって来たわけだ。
無論、サッチとエースには知られないよう、細心の注意は払った。


「…何ぃ?」
「や、多分あれはルーキーの一人だと思うんですが」
「…」


知らされた事実は、が(又しても)絡まれていたようだ、
という何とも曖昧なものだった。
ようだ、というのはどういう事なのか。
遠巻きに様子を伺っていたが、
で笑いながら話をしていたし、仲はよさそうだった。
という事は、知り合いなのではないか。
そういう結論に落ち着いたらしい。


「ご苦労だったな」
「いえ!」


少し目を離せばこの有様かとうんざりしながら自室へ戻れば、
ものの見事には爆睡しており、小言を言う気も失せた。

久々の第三惑星。まさかのキッド登場(キラーも)
そうして何気にこの話から、第二章突入なんですよ。
キッドとロー、どちらを先に出そうかと迷い、
キッドに落ち着いたという話でした。