あ、駄目だ。落ちる。

 

クソほど酷い筋肉痛に苛まれ、
ベッドから起き上がる事も出来ない状態がどのくらい続いたかな。
見かねたベンが粥を食べさせてくれたのもいい思い出です…。要介護かと思った。
いや、流石にトイレは這い蹲りながら己の足(というか四肢)で向かったけどね?
正直、泣きたかったです…。


流石に身動きが取れない状態で見知らぬ場所にいるという状態は怖かったなぁ。
一時間に一回くらい様子を伺いに来るシャンクスとか、何か怖かったなぁ…。
まぁ、その都度まるでお母さん宜しくベンが参上してくれて、
シャンクスを連れて行ってくれたから何事もなかったわけですけど。


まったく、この世界に来てからというもの
頭で考えても意味のないような展開に襲われまくっているわけで、
今回のこの筋肉痛にしても、何故だかシャンクスの船にいるという事態も、
まったく整理出来てない。


そもそも、どうしてシャンクス達は(ていうかベンだよね)
ここまで良くしてくれるんだろうか。
この寝たきり生活も船医さんによると明日くらいには終わりを迎えるらしいし、
そうなったらまずお詫びの言葉を―――――


!」
「な、何…?シャンクス…」
「こんな時に言うのも何だが、ここいらでお前に言っとこうと思ってな」
「な、何を…?」
「いやぁ、改めて言うのもこっ恥ずかしいが、俺ァお前の事が―――――!?」


ドアから顔だけを出し、口を開いていたシャンクスの頭上に鉄槌が喰らわされ、
邪魔したなとベンの声が続く。思わず笑った。


何度か眠り、思い出したのは敵襲に遭った事と、
不甲斐ない自分の姿なわけで、
仕方のない事とはいえ(だってほら、戦うとかないし)
あたし、足引っ張ってんなぁって後悔したな。
あたし、本当に何も出来なかったし。
でもなぁ。今更手習いしたとこで、いけるのかあたし…。


ようやく寝返りも出来るようになった。
目を閉じればマルコの顔が浮かび上がり、申し訳ないような気持ちになった。
ああ。マルコに会いたいな…。














エースとサッチが馬車馬の如く動き回り、の安否を確かめている。
お前はいいからここにいろと、半ば無理矢理に自室に閉じ込められ、何だか気も抜けた。
親父は心配するなと言うが、そんなのは土台無理な話だ。
あの時のの声、泣き出しそうな眼差し。
忘れられない。いや、忘れちゃならねェ。


小さな丸窓から海を見つめれば、
何とも穏やかな風景が広がっているもので、溜息を吐いた。
あいつらが俺を心配してここに閉じ込めたってのは分かるんだけどよぃ、
ここにゃの物が多すぎるんだよな。


消えたあの日まで、あいつはここで寝てて、
そういやどうでもいい(やるとかやらないとかの)事で俺も悩んでたよな…。
あ、駄目だ。落ちる。














「おいおい、ヤバイんじゃねェか?マルコの奴!!」
「ありゃ相当ヤバイだろ」
「ったく、あの馬鹿はどこに飛んでいっちまったのかねェ」
「何か、死んでねェ気がするよな、あいつ」


ストライカーで大海原を駆け巡るエースとサッチは、
行く充てもない捜索を行っていた。
が飛んでいった(この表現でいいのかどうかは分からねェが)
方向をくまなく探す方法しかないわけで、
俺達が行くと声高々に宣言し、海原へ旅立った。


「しっかし、知ってたが、広いなぁ。この海ってヤツは」
「おい、ちゃんと掴まってろよサッチ!俺ァお前を拾えねェぜ」
「だったらもう少し、安全運転を―――――」
「あ!!」


安全運転を心がけろと言った先から急ブレーキをかけ、
息つく間もなく走り出す。
本当に俺ァ吹き飛ばされるかと思ったよ サッチ談。


エースが向かった先は一隻の海賊船で、
傷の付いた髑髏マークから察するに、
赤髪のシャンクス、あの男の海賊船だ。
おいおいお前、マジかと思ったが、
エースは大きな声でお邪魔しますと挨拶し、船に乗り込む。
まあ、ここまで来たら乗りかけた船だ(二つの意味で)


「…何だ?いい度胸してるじゃねェか」
「よぉ、久々だなベックマン。シャンクス、いるかい?」
「人様の船に乗り込んでお前は―――――」
「エースじゃねェか!」


頭を摩りながらシャンクスは姿を現した。
何かあったのかと聞けども、
どうでもいい事だと横からベンが口を挟むもので、何となくスルー。
酒を持ってこいと騒ぐシャンクスに、
今日は急ぎなんだと告げたエースは要件を伝える。


「…?」
「ちょっと、何か飛んでいっちまって」
「…あぁ(飛んできたな、そういや)」
「こうやって捜索してるんだが、何分この広い海だ。俺ら二人じゃ手が回らねェ」
「…あのな、エース」
「うん?」
「お前に大事な話があるんだ」
「…何だよ…」


急に改まるなと言いつつ、シャンクスの顔を見つめる。
滅多に見る事が出来ないレベルの真顔。
最悪の想定が浮かんだ。まさか、を―――――


「あのな、」
「ねェ、あたし凄くない!?もうすっかり動けるようになったんですけど!」
「え、ええ!?」


何もかもをぶち壊したのはの登場であり、
思わず目を見開き口も開けっ放しで驚いたままのエースとサッチは置いておき、
いい所だったのに邪魔をするんじゃねェよと、
がっかりしているシャンクスも置いておく。


「あれ?エースとサッチ?え?」
「おっ…お前」
「え?え?何これ、この展開」


生きててよかったとまさかの大号泣。
立ち尽くしたままのあたしは、
まるで子供のように泣きじゃくるエースを
宥める術さえ持ってませんでした(うわあ、この状況、どうしよう)




すっごい久々に書きましたスイマセン。
どシリアスは一話きりで終了でした(何それ…)
シャンクスとベン、エースとサッチの回です。
歳を取ってからの筋肉痛は死ねるよね…