わざと共有させない快楽。


WORST-村田将五(頭蓋骨の歌、番外編)

「ぁ―――――」


何でだよ。頭の中ではそんな言葉、
いやその言葉だけがグルグルと回っている。
他には何も考えられず只何故、
そんな疑問のみを必死に考え答えを出そうとしているが出せず。
その内こんな疑問さえ抱かなくなるのだろうと分かっている。
それでも今はこうやって疑問だけでも抱いておきたい、
そうしていなければ俺は―――――


「ちょっ…


思わず名を呟いてしまうが は返事さえ、視線さえ寄越さない。
代わりにねばついた唾液の音がピチャリと室内に響き余計に五感を刺激した。
音ってのはよほどの威力があると実感する瞬間だ。
ベッドに背をつけながら股間に顔を埋める の髪を
指先で弄る余裕もない将五は目を閉じ顔を上げた。
眉間に皺を寄せ耐える。耐える必要はないだろうに。
何故こうなった。何故。
の舌が性器に纏わりつき、動く度にざわつくような感触に襲われている。
将五自身初めてではないというのにこの感触は何だろう。


「ぁっ、つ」


辛うじて開いた目に映るのは の部屋の天井だ。
幾度か見上げた事のある天井。荒げた息を整えながら視線を落とす。
ユラユラと動く の頭、髪。見慣れた自前の性器を軽く掴んだ細い指、
その上に被さる舌―――――視覚も随分な攻撃力を持つ。
むせ返るほど暑いのは興奮のせいだろうか。
もうこの状態に腹を括るしかないと分かっている。
彼女は求めているのだし、こうなる前は確実に自分も求めていた。
こうなるとは微塵も思わずにだ。 の方から仕掛けてくるとは思わなかった。
と出会い幾度目かの微妙な沈黙が訪れ
いつものように緩く笑いやり過ごす予定だったはずなのに。
俯きがちに笑った は将五に近づき口付けた。
多少戸惑いながらも受け入れれば舌が割り込み上半身だけがベッドに倒れこむ。





口付けの最中に の右手が将五のベルトを外しそのまま下着の中に侵入。
ストップをかける間もなく(そうして余りに呆気なくだ)
起立した性器に我ながら苦笑いをくれる。
好きな女とやる時はいつだって(誰もがだ)準備万端、まぁ勃たないわけがない。
それでも叶わないと思っていたからだろうか、
こういった関係になる事はないだろうと思っていたからかも知れない。
いざ が口をつける瞬間、やけに気恥ずかしさが増し思わず口元を手で覆った。
それからされるがまま、このざまだ。


、マジで、ちょっ…と」


出る。
そう言ったせつな排出される精液、著しい快感。
思わず の頭を押さえつけた己がいた。
しまったと内心焦りながらも一旦出してしまえば
随分冷静になり余裕も出て来るもので、どうにか息を整えながら を見る。
口の周りと掌を唾液で汚した
少しだけ嫌そうな顔をしたまま精液を飲み込んだ。
又だ。又ゾクリとした感情が芽生える。


「マズイ」
「ごめん、口に出すつもりじゃ―」
「何で温いのかしらね。これ、温いからマズイんだと思うのよ」
「いや、でも、ほら。人肌なんじゃ」
「今度あんたにも飲ませたげるわ」
「それだけは勘弁」


いつもの に戻ってしまう前に引きずり込もう。
口元をタオルで拭いている の腕を掴みこちらに抱き寄せる。
そのまま口付けようとすればあんたの味がするわよと笑われた。

表にある『髄骸骨の歌』の番外編です。
というかヒロシ系の誰かにしようと思ったんですが、
九里虎じゃあこんな可愛い反応を望めないだろうし、
拓海も何か違うような気がし、結果黒澤と将五で迷い…
今思ったんですが秀吉でもよかったかも。
いずれにしてもラブい感じですな。