性欲に愛は不要、か。


サムライチャンプルー-ムゲン


なぁ、アイツとやってる時ってどんななんだよ。
最初の言葉はそれで、まぁその時愚かにも
ムゲンの思惑に気づけなかった、それだけだ。
普段は必要以上に他人の腹の内を気にする癖に
少しばかり一緒に過ごしたせいか気が緩んでいたのだろう。
それ以外考えられない。


ハナから仲間などではなく単なる女だと思っていればよかったものの。
ムゲンはこちらの事を女としか見ていなかったのだ。
そうしてムゲンにとってのその位置は扱いが決まっている。
眼差しが色を持っていると常々思っていたのにだ。


ムゲンの眼差しには多分に色気が混ざっている。誘うような目だ。
そんな彼を不覚にも色っぽいと思ってしまった腹が知れたか。
ジンと関係を持った事が単に気に入らなかっただけかも知れない。
その線はなかなか濃厚だ。
あいつらはそんな下らない箇所にこだわる生き物だから。知っていた。


丁度全てにおいて隙が出来た瞬間だった。
フウもおらずジンもいない。
一人留守番をしていれば戸が開き、
昨晩から戻っていなかったムゲンが入って来る。
おかえりなさい、そう言ったように思う。
ムゲンは一通り室内を見回し誰もいねェのか、そう問うた。
二人とも出て行ったけど、何の気なしにそう呟けばムゲンは何も返さない。
戸を閉めた。一気に彼の雰囲気が増し僅かばかり居辛くなったのを覚えている。
それでも必死に気づかない振りをしていた。誰の為にか、自分の為にか。
いつもならば向かい側に座るはずのムゲンが隣に座り込み、
それでも何かを話す素振りはない。おかしいと分かってはいた。


こちらの勘違いかも知れないと思い立ち上がる事を躊躇していれば
ムゲンの手がの左手に重なる。何。咄嗟に口をついた。


「こんなチャンスは滅多にねェぜ」
「何の話?」
「手前と俺が二人ってのは、そうねェ」


ムゲンの顔が嫌に近い。
間抜けな話だがようやくここで気づいたのだ。
既に囚われている為逃げる事は出来ない。
徐々に重心をこちらに傾けたムゲンに覆い被さられ
押し倒されたような格好になる。
色を持った眼差しを直視だ。嫌に神経の根の部分が興奮した事を覚えている。
誘われているのだと知った。知っていた。
思わず身を起そうと動く、ムゲンの手が手首をしっかりと握る。


「嫌じゃねェだろ」
「ムゲン」
「どうせあいつらなら暫く戻って来やしねェよ」


何故か目を閉じなかった。
ムゲンの顔が近づき舌が唇を舐める箇所まで見ていた。
斬る時の顔と同じだ、命を奪う際と。ムゲンは目を閉じている。
躊躇なく割り込んでくる舌と唾液にリアリティが失われていく。
自然と引っ込んだ舌に絡み引きずり出される。胸元は肌蹴、乳房が露になる。
少しだけ強い力で掴まれ息が止まった。


何故だか無性に悲しく、それでもまだ涙は出ない。何がこんなに悲しいのだろう。
普段より息の荒いムゲンがまったくの別人に見え、それが悲しいのか。
大した愛撫もせず真っ直ぐに性器に手を伸ばす。
興奮してるんじゃねェか。ムゲンが笑った。
いいや違うこれは期待で濡れているんじゃないと言えず。
そんな箇所は知らなくてもいいところだ。


「痛っ」
「痛ェだ?」
「ちょっと、ムゲン」


指が無理に侵入する。圧迫感で目を閉じた。一本、二本。
せめて唾液で濡らせよと思いきっと睨む。
それが余計にムゲンを煽ったらしい。失態だと知っている。
ゾッとするほど嫌らしくムゲンが笑んだ、色気とでも言うのだろうか。判らない。
鎖骨から首筋にかけベロリと舐め上げ指の根元まで差し込む。
骨ばった指先の感覚ばかりが膣内を埋め不快感しか得ない。
気持ちよさは果たしてどこから生まれるのか。
大きな音をたてるようにわざと(だろう)大袈裟に指を抜き差しされども
余りに曖昧過ぎる、快感と呼べるまでの代物ではない。
意識が集中しきれていないからだろうか、
それとも―――――


「…だよなァ」
「何」
「嫌なはずだよな、オメーは」


低く笑ったムゲンの顔はこれまで見たどの表情よりも残酷で
は唇を噛む。
全て理解した上でムゲンは動いているのだと、
そんな在り来たりな事を思えば余りに遣る瀬無く、
は目を閉じた。
まあ、ムゲンですね。
ごめんねこんなムゲンで。
性懲りもなくどうしようもない。
そうして名前変換の箇所がひくほど少ない。