関係者以外肉体接触禁止。


海賊-ロー



おいおい、勘弁してくれよ。
小さく笑いながら当たり前のように入り込んでくるローを持て余す。
何度電話したと思ってやがるんだ。
物腰は柔らかいが室内に充満する空気から察するに機嫌は悪い。
それも相当に。
ローからの着信があっていた事は知っている。知っていて出なかったのだ。
出る事が出来なかったとも言う。


そもそもローの番号なんて登録さえしていない。
下四桁が覚えやすい番号だった為それだけで判断している。
そうしてその事はローも知っているはずなのにだ。それなのに何故怒ったのか。
ずぶ濡れなのは昨晩から降り続いている雨のせいで、
こんな豪雨の中を駆けて来たのだろうか。
―――――それほどまでに怒っていたというのか。
まったく面倒ばかり寄越しやがると腹の中で思った
曖昧な返事と表情を返した。


「…そう邪険にするんじゃねェよ」
「ロー」
「お前の都合はわかってるぜ」


俺は。
そう言えばローがここへ来たのは二度目になる、そんな事を考える。


最初はまだ可愛げがあった、少々酔ったローがチェーンロックを破壊し侵入を。
音に驚いたが恐る恐る様子を伺えば無邪気に笑った。ように思えた。
まあ酒のせいにしていたわけではないがやけに距離の近いローは
のそばから離れず、猫なで声で甘く囁いた。
耳傍で、吐く息が生々しく感じられる距離で。


それでも厄介な男に囲われていた為やんわりと断れば態度は豹変、
手首を掴みもっと距離は近づいた。
決して逸らさない眼差しがを見据えたった一言、
聞いちゃいねェんだよ。そう吐き捨てた。
要はお前の気持ちを確認しているわけではないという事だ。


勝てる、逃れる術はないと知りながらも、
一応身を捩れば手首を掴んだ力が強くなる。
ローの舌が首筋を舐めた。何かを言いかけたが言葉が出ない。
首を竦めればローが笑った。
掠れた声で。開いた手で顎を掴み背けた顔を上げさせる。


「行き場所がねェんだ、泊めてくれよ」
「…!」
「礼はするぜ」


これから、色々な。
こうなる前に何気なく誘導されていた定位置は寝具の上であり、
難なく押し倒されたは厄日だと思った。こいつはとんだ厄日だ。
長い腕に施されたタトゥーにまったく見覚えはなく、
単に弄ぶのが目的なのかそれとも殺しが目的なのか。
それが判らないから怖ろしかった。


まぁ愛撫は(こんなやり口の男にしては)優しく、
無理矢理でも強引でもなかった為その点に対する不安は消える。
妙に雰囲気のある男で強引なやり方なのに空気ばかりは甘かった。
まるで相思相愛の恋人同士宜しく。不思議だった。
無理矢理やられているにも係わらず途中で咥えてくれよなんて囁かれ、
まんまと咥えたも馬鹿だ。


咥えている最中に男の様子をぼんやりと伺った。
壁にもたれたローは蠢くの髪を撫でながら
随分と気持ちの良さそうな顔をしていた。
時折薄目を開けを見下ろす。
口元が笑んでいて、それがやけに可愛らしくいやらしかった。


「ごめんなさいねェ、ロー。電話に出る事が出来なくて」
「あぁ、まったく気にしちゃいねェぜ。
「ずぶ濡れじゃない。タオルを持って来るわ」
「―――――いや、」
「いや、って。床が濡れるのよ」
「随分身体が冷えちまって、シャワーを浴びてェな」
「…」
「お前も、そうじゃねェのか?」


毎度ながら含みのある言い方をする男だ。腹が立つ。


「…何の話?」
「何ならここで、股ァ開かせてもいいんだぜ、俺ァ」


結局それが目的じゃないかと笑いさえ出た。
まあ確かにこの男が来れば雰囲気も自分もおかしくなる。
こうなる事は判っていたはずだ。


「何なの?一緒に入るって事?」
「まァ、それも悪くはねェな」
「じゃあそこで服、脱いでよ」
「玄関じゃねェか」


若干空気が優しくなった。
それでもローはこちらの事情等一切汲みはしないのだと、
判っていても理解はしないのだと知り、
何れにしてもあの面倒な男にだけは
ばれないようにしないといけない、そう思った。


ローのペースが早いのはきっと気のせいです。
というか今まず心の底からローがアツい。
あいつ、格好良過ぎだろ…何なのあの格好良い感じ。
要は彼氏とかがいようがいまいが関係ない男という話でした。
因みに『面倒な男』というのはローよりも格上の…
何ならドフラミンゴとかシャンクスとかあの辺りで。
勝手に案外若いんじゃないのと踏んでるんですけど、
思ってたより年上だったらどうしましょう。