それでも人は笑うのです


海賊-ロー




テーブルの上に転がった幾つもの錠剤を手当たり次第に噛み砕いた。
まったく自然でない苦味が口いっぱいに広がり、
堪らないと呟いたはアルコールでそれを流し込む。
噛むから苦いんだよ。
ベッドの上に寝転んだローはそう言い笑った。
指先が徐々に鈍く痺れ、視界が回り始めれば宴は開始される。の脳内で。
とんだカーニバルだと知ってはいた。


錠剤の残りカスが口の中をザラリと汚し、
粉っぽさがなくならないと呟けば誘うようにローが舌を出す。
腹に跨り口付ければ細い顎から続く喉がゴクリと鳴り、
唾液ごと残りを流し込んだ。
まだ足りず、アルコールを足しもう一度流し込む。
水滴がローの薄い胸に零れた。
指先でそれを伸ばし、もう一度流し込む。


「甘ぇんだよ、それ」
「だって、苦いから」
「噛むからだろ」


寝転んだローが乳房に触れた。息をする度に揺れる。
視線で伝わった。身を屈める。
甘い舌先が乳首に触れ、間を置かず噛む。
鈍い感覚の中微かに声を漏らせば、
まるで脳天を殴られたような痺れに冒される。
持て余した指先でローの肌を侵す。


僅かに汗ばんだ肌を密着させればもう離れる事は出来ないような、
そんな気もするが薄い膜が貼っているような気もする。
セックスの感覚が鈍くなるような真似をするのは恐ろしいからだと知っていた。
この男に囚われていると感じるよりも、
件の苦い錠剤に囚われていると感じている方が気が楽だから。


小一時間ほど前に精を出し、萎びた筈の性器が股の下、
ゆっくりと硬さを増していく。
こちらとしても体液だが排出された精液だか分からないが、
そういったものに塗れ挿入の準備は出来ている。
貪るように口付けながら、開いた手で性器を掴み膣にあてる。
最初の一口を躊躇い、ローの表情を伺い、
眉間に皺が寄った辺りでもう一息腰を落とす。爪が胸を欠いただろうか。
ゆっくりと舌を離せばローの腕が腰を掴み、一気に奈落まで落とされた。


「…!!」
「焦らし過ぎなんだよ、お前は」
「は、ぁ」
「嫌いじゃ、ねぇが」


そういうのも。
とっくに痺れは全身に回り、目を開けることもままならない。
ローが身を起こし、こちらとの距離がなくなった事にさえ気づかない。
互いに抱き締めあい、一心不乱に身を捩じらせれば何かを得るのか。
快楽以外の何か。体液以外の何か。
口付ける間もないほど求め、まるで一つの生き物のように身を絡めあう。
精を放出した後の白々しい空気を恐れ、あえて背を向ける癖に。


「あっ、あ。あ」


出す寸前に口付けを求めるローの心中は未だ不明だ。
酸欠の状態で全てを放出し、なし崩しに倒れこむ。
荒い息ばかりが室内を埋める中、
昼間との落差が余りに酷すぎると、自嘲気味に笑った。


久々の更新も前回同様、ローです。
最近書いてる裏的なやつはローしかないんじゃないか。
何か、淡々とやりそうなイメージが・・・。
とにかく、避妊をしなさい。
2010/2/23