だってどうしようもない






そう。
この『狩』の本来の趣旨をは知らない。
何故ここに門倉がいたのかも、
そうして何故彼が今、
こんな場所で上着を脱いでいるのかも―――――


「えっ?えっ??何して」
「お前さぁ、何の為に『狩』があるのか知ってるのか?」


門倉はシャツを脱ぎながら言う。


「我々立会人は様々な場面で戦う可能性があるだろ。
 で、だ。決して負ける事は許されない立場だよな?
 だけど、万が一負けた場合の事は想定しなきゃならない。
 負けるって事は、賭朗の敵の手中にその身を置くって事だ。
 その際に絶対に守らなければならないルールがある」
「…賭朗を守る事」
「そう。例え、どんな目に遭ってもな」
「…で?それと今の雄大くんの状態、どう関係が」
「ああ、で、勝った奴の裁量に任されるんだよ。
 そいつに何が必要か見極めて耐性を付けさせる。
 だってお前がもし負けたらさ、絶対犯されるだろ」
「はぁあああああ!?」
「いやいや、絶対そうだろ」


何故かこのという女には、そういう危機感がまったくない。
とても無防備なのだ。
正直、現在賭朗に所属している女の中で一番可愛いのだ。
こんなに可愛いのに何故ここにいるんだと皆ざわついたくらいだ。


「お前以外の全員がそう思ってるぜ」
「…!!!」
「だから今回、『狩』が開催されたんだからな。
 簡単に言えば、お前の為に開催されたようなもんだ」
「何それ…」


顔面蒼白のは小さく呟く。
恐らく聡明な彼女の事、現状はすぐに理解したのだろう。
可愛い顔が曇る。
上目遣いで睨む。
あ、これはダメだ。


「何だよ」
「嫌なんだけど…」
「ダメっ」


ニッコリと不謹慎な笑顔を向けた門倉はに近づいた。
じり。壁に背をついたままのが視線だけ動かす。
刹那、立ち上がる。瞬間、掴んだ右手。
の身体が沈み、踵が膝の後ろを直撃した。


「痛って」
「離してよ!」
「バカかお前、そんな事したら」


煽るだけだろ。
体躯の小さな彼女を片手で持ち上げた。
ギョッとした顔のが身を捩りどうにか逃れようとする。
俺の興味もあるが、
その道理をに叩き込まなければならない。
お前はいつだって狙われてるし、
とてもそそる生き物なんだぜ。


「さっ、触んないでよ!」
「ホラどーした、。逃げねェのか?」
「雄大くん!!」


やはり、この体躯の小さいは接近戦に向かない。
相手がずぶの素人であれば打撃は通用するだろうが、
多少なりとも齧っている人間が相手の場合は無理だ。
相手の打撃を受け止める事が出来ない為、
すぐに吹き飛ばされるし、


〜〜。
 この体制に持ち込まれちまったらもう終わりだからな。
 こうなる前に絶対にどうにかしろ。そうでもしねェと、」


逃げられなくなる。
今、まさにその体勢で門倉は言う。
横たわったの腰の上に乗り、肩を上から押さえつけた状態。
の足がバタつくがびくともしない。


「…とまぁ、そういう事だ。俺が今説明した点に気を付けるように」
「…退けて」
「ダメ」


ああ。あたしはこの体勢をよく知っているし、
この表情もよく知っている。


「こっから先は、役得って事で」
「大っ嫌い!」
「だから、そういう事言うなって」


煽るだけだから。
門倉の顔が近づき、思わず逸らす。
眼帯の無機質な感触が頬を掠め、
左肩を押さえていた掌が肘に変わり、顎を掴まれた。
これから先、何をどうされるか知っている。
思い出す。重なる。だけど、それがどうした。


「ん、ん!」


門倉の唇が重なり、無理矢理に侵入する。
逃げる舌が舌を追い、唾液が絡まる。
この息苦しさを知っている。熱も、景色も。
何もかも知っているのに阻む術を持たない。ずっと。


門倉の指が頬から首筋、耳を撫でた。
ゾクゾクとした感触に襲われ、勝手に身が強張る。
呼吸が、息が苦しい。


「やだって…!!」
「何が?」
「も、やめて」
「だから、何を?」


耳側で門倉が囁き、熱を帯びたままの声で脳髄まで痺れるようだ。
そのまま首筋を舐め噛みつく。
空いた手でのシャツを脱がせた。
肌蹴た胸は白い。刹那、目に入る傷跡。
そういえばの過去を何一つ知らない事に気づいた。
能輪がスカウトするレベルの女だ。
何かしら人に言えない過去を持っているには違いないが、
が口を開く事がない為(詰まらないお喋りはする癖にだ)
誰も知らないのが現状だ。
傷跡は大分、色褪せている。
随分昔のものなのだろうか。


「されるがままじゃマズイぜ」
「………!」
「いや、言っとくけど別に俺の性癖じゃないからな」
「そんなの、聞いてない」
「逃げろって」


逃げろ逃げろと耳側で囁く門倉はその手を緩めず、
気づけばほぼ裸の状態になっている
知っている光景とリンクさせていた。


あの時は必死で抵抗し、しこたま殴られ、
意識など殆どない状態で犯されたし、
その次は抵抗するなと首を絞められた。
それはそれで死ぬかと思った。
徐々に、抵抗しない方がまだマシなのだと考え、
頭の中で切り替えるようにした。
あいつらはそれを喜んでいたのだろうか。


「…雄大くんさ」
「ん?」
「あたしの事好きだよね」
「…」


門倉の動きが止まった。


「だから、こんなに優しいの?」


ぽっかりと見上げたの目は丸く、
まるで子供のようだと錯覚した。
こんな目に遭っていて、何が優しい?
門倉の目に悩みが生じた瞬間、が飛び起きた。
そのまますり抜ける。否、間一髪。右足首を掴んで捕獲。


「ちっ」
「お前はさぁ…あと一歩なんだよなぁ」
「騙されなかったか…」
「あざとい」


そこは悪くない、 むしろ称賛に値する。
門倉はそう言って、ジリジリと近づく。


「やっぱりするの?」
「や、ここでやめるわけないだろ」
「…嫌いになるから」
「…」


嫌いでない相手とセックスをした事がないだけだ。
だから逆に恐ろしい。
別に門倉の事が好きなわけではないし、
そもそも恋愛感情なんて持ち合わせていない。
この男が言うように、あざとく人を操り生きてきたし、
これからも生きていくつもりだ。
だけれど、この数十分で嫌というほど分かってしまった。
この男は優しすぎる―――――


「っ、あっ!」


答えよりも先に門倉の指が体内に侵入、グッと距離が縮まる。
ああ、これは。これは―――――
この先は知らない。
どうにか声を出さないように奥歯を強く噛み目を閉じた。


無駄に長い。。。
そしてさほどエロくない。
雄大くんは性癖が比較的ノーマル過ぎて書き難い

2015/09/20