本能のまま


肉を噛み無理矢理身体を離した。
鉄の味が口の中に広がり思わず吐き出す。
唇から血を滴らせた巳虎はの首を掴んだまま、
彼女を見下ろしていた。



この姿勢で見下ろす女の姿が好きだ。
反応は多種多様、泣く、怯える、叫ぶ、恫喝する。
その先に自分が何をされるのか知っているからだ。



こんな状況下で行われる事は一つしかない。
力づくで押し倒され身を貪られる。
古代から続くとても原始的な行為だ。
別に巳虎の性癖ではない。



只、これは【狩】なのだ。
が外部で同じような状況に置かれた場合、
最も可能性の高い行動を予測しなければならない。



少しだけ息の上がった
胸を上下させながらこちらを見つめている。
整った可愛らしい顔。
これはどうしたって、性欲をビンビンに刺激する。
嗜虐心を。



「抵抗しねェの?」
「…そういうのが好きなの?」
「その対応は間違ってない。お前は正しいよ、
「どうしてこういう事、するの」
「これが【狩】だから」



この【狩】の趣向を簡単に説明すると、
は割と簡単に納得したようで、
早く終わらせてとばかりに顔を背けた。



いや、だから。
だから、そういうのじゃないんだよ、
これからのお楽しみは、そういうんじゃない。



「お前、こういうの初めてじゃないだろ」
「…」
「妙に慣れてて、澄まして」
「…」
「これ、知ってる?」



腹の上に座った巳虎は、
ポケットから何かを取り出しに見せた。
赤い草。
あれは、確か、どこかで―――――



「えっ、何?知ってんの?マジで??」
「あんた、それ」
「えぇーお前、知ってんの?何で?どんな生き方してきたんだよ」
「やめてよ、それ」


下手に抵抗すると喜ぶのだという事に気づき、
心を殺しじっと耐え忍ぶ道を選んだに、
あの男はある日上機嫌で赤い草を持ってきた。
散々身体を弄び、まるで物言わぬ死体のようなを見下ろす。
下卑た顔で笑った。
腹の底がぐっと冷え、得も言われぬ恐怖に襲われた。



「大丈夫大丈夫、これ、軽いヤツだから。
 そもそも俺も使うのに、そんな強いやつを焚くわけないだろ」
「嫌だ」
「お前にはこれ」
「!!!」



赤い草に意識を奪われ、完全に油断していた。
巳虎の舌がグイと口内に押し入り、そのまま首を絞められる。
吐き出す事も出来ず飲み込んだ。
一体、何を飲ませやがった。
手が離れた瞬間咳き込み
どうにか吐き出そうとするが無駄だった。



「心配するなよ、。人体には無害だし、依存性もない」
「…!!」
「けど、即効性なんだ、それ」



すげェ効くだろ。
あの男は赤い草を燻し、室内に煙を充満させた。
その香り、香草のような香りだ。
それを嗅いだ瞬間、全身の血液が逆流するような感覚に陥り、
五感が研ぎ澄まされた。
少しの感触が何倍にも感じられ、
頭の中は靄がかかったようにはっきりとしない。
理性が失われた状態だ。



すこし経ってから、その時の状態を撮った
動画を見せられた事がある。
多少保たれていた自我を壊せるほどの
痴態を目の当たりにした。



「…っ、あ」
「俺、嫌がる女とヤれねェの。超萎えるし」
「ふざけ」
「女は感じてる方が可愛いよ」
「……!!!」



耳側で囁かれ、軽く耳朶を噛まれた。
ゾクゾクと全身が震え、声を殺す事が出来ない。
あの時の動画と同じだ。
感覚に狂わされた獣になってしまう。
歯止めが効かない。



巳虎がの指先を舐め、軽く噛んだ。
一本、一本、丁寧に。
こんなやり口で嫌に丁寧な愛撫だ。



「…こういうの、初めてなんだろ」
「……!!!」



気づけば服も脱がされており、
この身体の傷を見てからの言い分だと知っていた。



「やめ、て」
「何で?気持ちいいだろ?セックスって気持ちいんだぜ」
「ぁ、やめ」
「それに」



ゲストがいるからさ。
全身を苛む快感に耐えながら巳虎の言葉を聞いていた。
不可解な単語だ。ゲスト。
ここにはと巳虎しかいないはずなのに?
頭の中がグルグルと周り思考が落ち着かない。
どうにか薄目を開ける。



「…………っ!!!」



しゃがみ込み顔を覗き込む、弥鱈と目が合った。






私の中の巳虎は
とても普通のリア充モテ男です
あとセックス上手そう(イメージ)
まだ続くよ!

2015/10/05