僕と恋に墜ちよう


海賊-エースとマルコ




目を閉じたままで事が終われば何よりだったが、
身を弄る四本の手がそれを許さない。
口を塞いだままのエースの掌が邪魔で、顔を背けた。
剥きだしになった首筋に吸い付いたのはエースだろうか。
ざらついた舌が鎖骨から舐め上げ、息を止めるように吸い付く。
焼けるように熱かった。


流されながらも痕がついてしまうと思う程度の理性は残り、
それがいよいよ邪魔だ。
こんな状態を理解しようだなんて思わないし、まったくの無意味だと思う。
同じ船の中で生活し、いつだって顔を合わせる間柄なのに、
こんな事をしてしまえば内心複雑極まりない。
ああ、この男達はこちらをそういう目で見ていたのだと、
ぼんやりながら考えてしまうし、
まあこの男達が海賊だという事実を理解した上でもだ。
悲しくなる。そんなものだと割り切れない。
息を大きく吸い込んだ。酷く息苦しい。
目を閉じやり過ごしていれば終わるだろうか。


「…っ!!」
「目ぇ開けろよ、
「ぁ、何…」
「愉しもうぜ」


エースの掌が頬を包み、唇のすぐ上でそう囁いた。
少しだけ腹が立ち、右手を振り上げる。頭上を通る瞬間に捕らわれた。
視線を向ける。マルコが掴んだらしい。
左手は依然、エースが掴んでいる為、動かす事が出来ない。


「そんな言い方があるかよぃ」
「さっきから一々うるせぇなぁ」
「ちょっ…と」
「そもそも何で俺ァ、お前なんかとこんな」
「先に頂くぜ」


エースの身体が直に重なり、身動きが取れなくなった。酷く重い。
左手が解放されたと同時に性器内に指が侵入する感触だ。
ビクリと身体が震える。頭上ではマルコの溜息が響いているし、
先ほどからエースは延々、こちらの様子、表情を伺っているのだ。
舐めるような視線でこちらを見ている。
反応を、表情を見つめている。
最初は緩く、時折強く指を動かす。


「ぁっ、あ」
「…なぁ、エース」
「あ?」
「お前、知ってたろぃ」
「何が」
「俺が、コイツを気に入ってる事」


最悪な展開での告白を上の空で聞いていた。
まぁ、そんな気はしていたから、さして驚くような事ではなかった。
只、それよりも、そんな事よりもだ。
体内で蠢く指先が気になって仕方がない。


「あぁ、そりゃあ悪ぃ。俺ァちっとも気づかなくてよ」
「嘘吐けよぃ」
「けど奇遇だな、俺も気に入ってんだ」
「…ちょっ」
「今、話してんだ。悪ぃが、口、挟まねぇでくんねぇか」
「エース、っ」


一層深く挿れられた指が一気に抜かれ、濡れた指を目と鼻の先で舐め上げる。
視線はでなく、マルコの方へ向けられているし、
そちらに意識を奪われていれば前触れなしに性器を押し込められた。
内部からの圧力に息が止まる。


「…っ、と」
「あっ…!ゃ、ぁ」
「ご無沙汰だったからねぇ、すぐイっちまいそうだ」
「中には出すなよぃ」
「そいつは、約束出来ねぇ」
「おい」
「…あっ!」


ちっともこちらに意識を向けない男達の下で
身動きさえ取れずされるがままになる。
緩々と動くエースの腰や、理由は分からないが延々と髪を弄ぶマルコの指。
熱の篭ったこの部屋は常軌を逸している。
既に何も考えたくなくなっているは揺さぶられるままに呼吸ばかりを繰り返す。
エースの指が唇を押し、口を開けさせた。
男達の会話は未だ平然と続いている。


「声がうるせぇな。なぁ、マルコ」
「…何が気に入ってるだよぃ」
「こんな姿ァ見せられて、気が昂ぶらねぇわけはねぇだろ」
「お前とは何れ、きちんと話をしなけりゃならねぇと思ってた所だよぃ」
「悪ぃな、。ちょっとばかりきついだろうが、我慢してくれ」


滲む視界の中、マルコの性器が見えた。
何となく次の行動が読め、目を閉じる。 舌先に熱い感触が触れ、少しだけ笑いたくなった。
もう、何もかもがどうでもいい。


「ん、ん…!」
「さァ、これで舞台は整った。じっくり話し合おうか、マルコ」
「…あァ」


口内で硬度を増していくマルコの性器は唾液に塗れている。
歯を立てないようにと気を使う立場ではないが、
舌で歯を覆い傷がつかないようにする。
エースの動きが早さを増した。息が苦しい。
マルコの指先はまだ髪を撫でている。


「何れにしても、こいつは許さねぇだろよぃ」
「違いねぇ」
「まったく、散々な展開だよぃ」


達する直前に辛うじて薄目を開けた。
この、ろくでなし共が。
眼差しでそう呟いたが届いただろうか。
汗ばんだ肌が吸い付きそうで、身を捩りたかったが動かず、
大きな感覚を無防備な状態で受ける事になった。

エースが名を囁く。

マルコも囁く。
そうして光。頭の中が真っ白な強い光に埋め尽くされた。














力が抜けた身体はだるく、まるで他人のもののようだった。
意識が戻った瞬間、口内に溜まった精液を吐き出す。
体液や精液で汚れたこの部屋の片付けをどうしようかと思うが、
まだ思考が正常に動いていない。只、億劫だと思った。


淀んだ空気が充満した室内には、
未だ話し合いという名の言い合いをしている男二人がいるのだし、
仮に彼らがこの部屋を出て行ったとしてだ。
ドアが閉まった瞬間に、この出来事が記憶として存在してしまう。


明日からどんな顔をして生活していくのだろうと、詰まらない事を考えた。
この男達が動じるわけない。問題は自身なのだと気づき、目を閉じる。
目を閉じても何かが変わるとは思えず、疲れを癒す為だけに眠りに落ちた。


エースの館『もう少しだけ汚して』の続き。
まさかこんな展開だとは夢にも思わず。
もう、最低だよねこの二人…。
マルコは主人公を本当に好きなんですけどね。
2010/04/27