飼育のゆきとどかない

動物園みたいな楽園の夢をみている








随分ご無沙汰だからだろうか。
この賭朗に入ってからというもの、
当然ながら男と関係を持つ暇がなく
(そもそも一般の男と出会う機会さえ失われているのだ)
正直なところ欲求不満気味だったとは思うわけだ。
只、日々に忙殺され忘れていた。



だからきっとこんな夢を見ている。
見知らぬ男とセックスをしている夢。
どんな夢だ…。
だけれどとても気持ちがいい。
正味の話、今更どこぞの男といざセックスする場面に遭遇した場合、
やり方を忘れている可能性すらある。
そんな私なのに気持ちがいいとは、
中々ラッキーな夢なのかも知れない。



それにしたって、これはどういう状態なのだろう。
猿夢というやつなのか。
確かに今、夢の中では自分が見知らぬ男とセックスをしているのに、
意識は第三者視点、少しだけ上の方から状態を眺めている。
だけれど感覚は伴う。
それも、とてもリアルに。
とても不思議な感覚だ。
これは、いったい、



「…っ、あ」
「!」
「はぁ、っ、あっ…あ」
「…」
「はあっ!?」
「よぉ」
「あっ、はっ!?えっ、何!?」
「使わせてもらってるぜー」
「はぁ!?ちょっ、ふざけ」



目覚めるとセックスの真っ最中だった。
だなんてそんな事があって堪るか…。
そうは思うが実際に半裸だわ(何であたし、服肌蹴てるの?)
足の間で巳虎は動いているわ(こいつ何やってんの?)
どこからどう見てもセックスの真っ最中なわけで、
これはどういう事なのか。
というか、夢だと思っていた気持ちよさは現実のものだったのか。



思考は停止しているし(だって、寝起きもいいとこだからね?)
だけれど身体は起きていて脳だけ寝ていたような状態だったのか、
この身体は当然の如く感覚を全身に共有している。
要は、とても気持ちがいい。



「てか、お前あんま声出すなよ」
「…!?」
「隣、会議してっから」
「!?」
「割と人数いるからさ」



ばれたらマズイっしょ。
等と、したり顔でお前が言うなという所だが、
徐々に頭がはっきりとしてきた。



私ことは、
現在掃除人としてやらせて頂いているわけなんですが、
数時間前にしくじったのだ。多分。
足場が急に崩れた所までは覚えているのだが、
それから先は記憶にない。
が、今ここで巳虎に犯されている状況を考えると
誰かによって救出されたのだろう。



窮地から救われているというのに、
結果コイツに犯されている事実がまったく理解出来ない。



「…っ、は、」
「あぁーイキそ」
「…!!」



声を押し殺すだけで精一杯だった。
隣の部屋では会議が行われているらしいし、
声は出すなと言われるわ身体だけは勝手に出来上がっているわ、
腰を叩き付ける巳虎のペースはどんどん早くなるわ、
そりゃもう声を我慢出来ただけでも御の字だ。
反射的にしがみ付けば巳虎の身体がグッと近づき、
射精の直前に口づけられた。



全身汗まみれになりながら肩で息をしている。
とりあえず巳虎を蹴り倒し、
少しは雰囲気を出せよとぼやく男に詰め寄った。
当然の展開だ。



「お前何やってんだよ」
「いやー何かさあ」
「言い訳次第じゃ殺すからなお前」



寝てる間に犯されるだなんて前代未聞だ。
頭の整理はつかないまでも、
とりあえずこの男に犯されていた事実は揺るがないわけで、
半裸のまま宣戦布告する。



いやいやもう申し訳ありませんが、
こちとら掃除人としてやってるわけですよ。
実力はお前と大差ねェぞ。



「いやな、お前が運び込まれたって話を聞いたんだよ、俺は」
「はぁ?」
「お前、職務中に落下したんだろ?覚えてねェの?」
「あんまり」
「ウケるーとか思ってたんだけど、
丈一さんとか血相変えて出てくからさ」



話によると、丈一が助けに向かったようだ。
その事実にも動揺を隠せない。
どれだけどやされるのだろう…。



その後、こと私を抱え帰って来た丈一は
賭朗直属の病院へ向かい、どうやら私は二日ほど入院したらしい。
精密検査を受け問題がなかった為、
その後すぐに退院し自宅療養となった。
が、何故かここ、賭朗の母屋にいる。



「何であたしここにいるのよ」
「や、何か丈一さんが心配だからって、
どうやらお前、入れ代わり立ち代わり看病されてたみたいよ」
「えぇ…」
「で、この俺もね。ほら俺って、お前の事超愛してるだろ?
もう夜も眠れるくらい心配だったから、こうして見舞いにだな」
「見舞いに来て病人犯すバカがどこにいるんだよ」
「いや、それは誤解だ」



この男、どの面を下げてそんな事を…。



「お前が寝汗かいてたから、着替えさせようと思ったんだよ」
「よし、やるか。號奪戦」
「まーてって」
「この期に及んで何を…?」
「俺の話を聞けって」



そもそも、ズボンとパンツだけを脱いでやっていた男の話なんて
聞く気にもならないわけで、
この男に犯されていたほんの少し前の過去をどうにか殺したい。
身を交わすと好きになるだなんて嘘だ。
だからといってショックを受けるでもなく
驚くばかりだった自身もどこかイカレてるのかも知れないが。



「!」
「何…」
「と、じゃな、。又来るわ」
「はっ!?ちょっと…!」



窓から巳虎が飛び降りるのと、入口のドアが開くのはほぼ同時で、
振り向けばそこには直立したままの真鍋がおり、
そこでようやく半裸の状態だった事を思い出す。
何故この男が訪れるのかと思えば、
ひょっこりと嵐童が顔を出した。



「…すまない」
「や、ちょっと、あの」
「嵐童が会いたがってな」
「あの、服着るんでちょっと」



これ以上裸を晒すわけにもいかず、
背を向けたまま慌てて服を着る。
素知らぬ顔をしている真鍋はともかく
(私この人と接点ほとんどないんだけど…)
相変わらずどこを見ているのか分からない嵐童は、
それでも心配してくれていたのだ。
彼が丈一の部下になってから、割と一緒にいる。
優しい子だと知っている。



服を着おえ、声をかけた。
ちゃんと心配をしてくれた唯一の人間の為に、
少しだけ話をしよう。








すいません、本当にしょうもない話です
先日(かな?)ついったで呟いてた、
【丈一とランペイジと長と花さんがとりあえず出てくる。
あとモブで広島組が出る話】です。
私、どうやら巳虎を大変誤解してる。
だけど、とっても書きやすい、、、

後日談?のようなものがあります

2015/12/24