今日もあいつが飲んだくれてくだを巻いていると聞き、
何故だか同じ事を繰り返していると思いながらも
マルコは酒場へ向かう。
あの、強い女を引き取りに行くのだ。


はカウンターの一番奥、
いつもの席でグラスを片手にきっと眠っているはずだ。
十二分な時間は経過したはずだし、
酒に飲まれ最終的には眠ってしまう女だから。
柄の悪い酒場で、何もそんなに無防備に眠らなくても
いいじゃねぇかと毎度思うが口には出さない。
の気持ちは痛すぎるほど理解しているつもりだから。
だからマルコは何も言わない。


ティーチを追い、出て行ったエースに対し、
は笑顔で手を振っていた。
だからもう何も言うまいと心に決めた。
その日の夜、甲板で一人泣いていたは笑って見送ったと、
涙を流しながら笑って見せた。
心が締め付けられるという事は、きっとこういう事だと思った。
年甲斐もないと思い秘めた。


「…邪魔するよぃ」
「今日は一段と酷かったんだよ。悪いな、マルコ」


淋しさに押し潰され、身を滅ぼしているを見ながら、
本当に淋しいのは誰なのだろうと、そんな事を考えるわけだ。
恋心を殺し、エースを見送ったなのか、
まだ恋なんてものを引き摺れなかったエースなのか。
それとも。
心を殺さざるを得なかった自分自身なのか。


「帰るぞ、
「…」
「釣りは要らねぇ、邪魔したな」


泥酔したを拾い、同じ道を辿る。
背負った彼女が本当に眠っているのかは分からないが、
まだ二人で一緒にここから船までの景色を眺めた事はない。
から伝わる熱を背に受けながら、
一歩、又一歩と歩みを進めれば視界の端を流れ星が駆け落ちた。



誰も、くない


拍手、ありがとうございました!
第十三弾はマルコでした。
まあ、報われてなどいないよね。
2010/4/5