いやいやちょっと待てよ、そういう事じゃねぇって。
何?何も言っちゃいねぇって?そうか、そりゃ悪ぃ悪ぃ。
てっきり俺ァお前が無視してんのかと―――――
なァ、。俺の話を一分だけでいいから聞いてくれねぇか?
お前が忙しいってのは重々承知だ。
だから、たった。たった一分だけ。
俺の目を見て、ちゃんと話を聞いてくれ。
今、頷いたよな?頷いたって事はOKって事だよな?
そんな、そんな邪険にするなよ。流石にこの俺も傷付いちまうぜ。
どうして俺の目を見てくれねぇんだ?


なァ、俺が悪かったよ。何もかも全部、俺が悪かった。
お前が怒ってんのは知ってる、そりゃ仕方のねぇ事だ。
あぁー…何て言うんだ?何て言ったらいいんだか…
お前と俺が付き合ってる時に、他の女に手を出した事は、本当に悪いと思ってる。
言い訳なんか出来ねぇけど、もう名前も覚えちゃいねぇし―――――
えっ?あんな態度…?いや、忘れちゃいねぇよ。(あんな態度…?)
あの時も今も、俺が一番好きなのはお前だけなんだよ。
俺ァ馬鹿だから、そういう大事な事に気づくまで時間がかかっちまう。
けど馬鹿は馬鹿なりに欲しいモノは分かるんだな。
いや、欲しいモンしか残らなかったんだよ、俺には。それがお前で―――――


おい、おい!何?もう一分過ぎたって?
いや、確かに俺ァ一分って言ったけど、そりゃ例えだろ?
まだちっとも俺はお前に伝えきれてねぇし、
言いたい事の半分も言えてねぇ―――――
!なぁ!後、一分、一分だけ…!









付き合っている最中に他の女と浮気を繰り返し、
最後の光景はベッドインの最中。
どう転んでも言い訳の出来ない状態ではあった。
まあ、それでもエース(の馬鹿)はまるで開き直ってでもいたみたいに、
別れたいんなら別れてやってもいい、だとかふざけた口を利くものだから、
二度と顔も見たくないと頬を張り、啖呵を切ってやった。
啖呵を切ったはいいものの、相当に好きだったもので後悔はするは
(どうしてあんな事を言ってしまったのだろう、だとかそういう詰まらない後悔だ)
泣き濡れるわで一時期私生活が荒れに荒れてしまったのも今は遠い記憶だ。


いい男なんて他にも山ほどいると言う友人達に支えられ、
最近になりようやく、いいかも、と思える人も出来たというのに。
それなのに、運命はどこまであたしを弄べば気が済むというのか。
もう嫌。部屋の中で一人、ぽつんと座り込んだままぼんやりと思いを馳せたり、
何かを考える事がまったく出来なくなったり。
あんな思いをするのは一度きりでいい。


やっと普通に眠れるようになったの、
ようやく真夜中に目が覚めなくなったの。
ねぇ、どうして突然電話なんかくれたの?
ねぇ、どうして番号を消してなかったの?
ああ、それはあたしも同じか。
ねえ、あの女に振られただけなんでしょう?
一人になって、淋しいだけなんでしょう?
だって、エース。あんたは淋しがりやだから。


今更よりを戻したいだなんて
あんまりにも都合がよ過ぎると頭では分かっているのに、
どうして何も言う事が出来ない。どうして泣きそうになるの。
どうして勝手に手を握るの、エース。


目を閉じても耳に届くエースの言葉は酷く軽薄で、信じる価値は微塵もない。
それなのに心ばかりが酷く揺さぶられ、
それを知られないようはきつく目を閉じた。



手放したい意識


拍手、ありがとうございました!
第十五弾はエース(最低気味)でした。
完全なるダメ男になってしまったスマン、エース。
あれだけエース、エースと騒いでる癖にね…
2010/4/13