これまでもこれからも何も変わらない。
必要がないし、そんな予定もない。
俺とお前は何一つ変わる必要がねぇし、なぁ、
ずっと変わらねぇだろう?
抱き合って手を取り、囁いていたあの頃と何一つ変わりはしないはずだ。
太陽が昇っては落ち、月が昇っては落ち。
満ち引きの摂理も変わらない。何も変わらない、何も。


「手を上げなさい、ロー」
「おいおい、冗談が過ぎるぜ、
「ふざけないで」


ベッドの中で愛を囁き、
明け方まで腕の中に眠っていた彼女の姿を思い出す。
ローの腕の中にすっぽりと埋まる体躯も、
よく、ローのリングに絡まっていた細い髪の毛も全て自分のものだ。
誰のものでも、のものでもない。全て俺のもの。


それなのに、どうして目前のは短い髪をしているのか。
決して似合っていないわけではなく、
むしろ似合っているとは思うのだが、
一言くらい断りがあってもよかったのではないか。


「ちっとも顔を見せねぇと思えば、何のプレイだよ」
「あんた…!!」
「まぁ、お前は何をしても可愛いが」


気持ちを素直に伝えているだけなのに、
どうして彼女が激昂したのかが分からない。
刀を振り上げ、斬りかかって来たの手首を軽く掴み、身を引き寄せた。
短く切られた髪に口付ける。
あの頃も今も、髪が長かろうが短かろうが何も変わらない。
俺がお前を心の底から愛してるって事だけは変わりようがねぇだろ。


「離して…!」
「どうしたんだ、お前」
「離しなさい!!」


の唇が震えている。
何をそんなに怒っているんだと呆れていれば、
ああ、そういえば俺がこいつの仲間を殺したからかな、
だなんて少し前の出来事を思い出してしまった。


いや、だけど俺は何も変わってねぇし、
お前も何一つ変わっちゃいないだろう?
そんな事くらいで変わるわけがねぇし、俺はお前を愛してるし。


確かにが姿を眩ませた事に関しては想定の範囲外だったが、
こうやって見事捕まえる事が出来たのだ。
だからもう二度と手放しはしない。


ぎゅっと抱き締めればが膝から崩れ落ちた。
何が間違っているのかを、その実、気づかない振りをしていた。



間違っていてもいい、

そばにいてください



拍手、ありがとうございました!
第十六弾はロー(病的)でした。
病んでいる振りローともいう。
2010/4/18