甲板から勢いよく飛び出し、翼を羽ばたかせ大空に舞い上がった。
二本の足で地を蹴っている暇はない、そんな時間はまったくない。
時速数キロの速さなんかじゃまったく届かないのだ。
そんな速さじゃを掴まえる事が出来ない。


どうやら気づいていなかったのはマルコだけだったらしく、皆の白々しいあの態度だ。
隠し通せないのなら首を突っ込むなという話になる。
の姿が船内に見えなくなったと思いながらも何故か姿を消したとは思えず、
所用で席を外しているとでも思っていたのか。


おい、マルコ。
サッチが声をかけて来た時、本当は耳を塞ぎたかったが耐えた。
何だよぃ。
そ知らぬ顔で答えれば、何をしてんだよと胸を押される。
背が壁にあたり、全てを把握した瞬間だ。
気づかない振りをしていた自身にさえ気づいた。
あいつは出て行っちまったぞ。もう三日も前だ。どうして聞きもしねぇんだ。
サッチの言葉に的確な返答を返す術は持てず、言い訳ばかりが口をつきそうで黙り込んだ。


とサッチは仲がよかった。
は日ごろの悩みなんてものをサッチに相談していたようだし、
だからサッチの気持ちは分かるつもりだ。
お前の事をあれだけ愛してるあいつに、どうしてそこまで冷たく出来るんだ。
冷たくするんならするで、きれいさっぱり終わらせてからにしろよ。
違う、違うんだよぃ。そんなつもりは毛頭、冷たくしてるつもりなんて、俺は。
やはり言い訳だ。


元々根が身勝手なもので、確かに気が向いた時にだけ相手をし、
基本的には放置の関係だった。足りなかっただろうと思う。
色々と、思いや、心なんてものが。
それでも何故か無条件に愛情を注ぐものだから、
それがいつしか普通となり、の心が見え難くなった。
いや、見ていなかっただけだ。


あんな事ばかりをしていて、今更側にいてくれだなんて、余りにも都合がよすぎないか。
を引き止めれば自分が仕出かした悪い事全てを目の当たりにする事となる。
何れにしても自業自得で、だったらどちらを選べばいいのか。
お前が迎えに行かなきゃ、あいつは二度と戻って来やしねぇぞ。


サッチの言葉が耳を掠った瞬間、飛び出した。
行き先はと過ごした年数が教えてくれる。
太陽に目眩みそうになりながら羽ばたいた。



いわゆるひとつののかたち


拍手、ありがとうございました!
第十七弾はマルコ(むしろサッチ?)でした。
この話からサッチの絡む率が跳ね上がったよね…。
2010/4/24