エースは口癖のように、
俺は年を取りたくねェんだと、そんな事を言っていた。
そんなものは否応なしに取る事になるんじゃないの。
こちらがそう返せば、だから嫌になるのだと笑う。


スペード海賊団として名を馳せ、
共に悪事を働いていた頃は確かに楽しかったし、
だけれどそんな時間が永遠ではないのだと分かっていたのだ。


も若かったし、エースも若かった。
長い人生の中のほんの僅かな時間。
エースは基本的に何かに憤っていたし、
で怒りに身を任せていた。
理由も何もなく、二人とも怒っていたのだ。


そんな若い二人だから、小さな諍いは日常で、
だけれどある日、取り返しのつかない言い争いに発展した。
所謂、喧嘩別れというやつだ。


それが確か二年前の事。
そうして今、ここにエースはいる。



「…いよォ」
「エース」
「お前が、ここにいるって聞いて」
「久しぶりね」
「あぁ」



エースが白ひげ海賊団に入った事は知っている。
風の噂ですぐに流れて来た。


喧嘩別れしたまま、こちらは海を捨てたわけだし、
今更戻りたいとも思わない。


中々認める事は出来なかったのだけれど、
海が好きだというよりも、エースの事が好きだったのだ。


目的があり海賊になったわけでもなく、
エースと一緒に過ごしたいから海賊になった。
この事実にエースは気づいているのだろうか。



「海は嫌いかい」
「海に嫌われてるのは、そっちでしょう」
「けど、俺は好きだ」
「…」
「お前の、事も」



二人で散々な真似をしてきた。
決して許されない事だ。


今、海を捨て陸で何食わぬ顔を引っ提げ暮らしているけれど、
この両手は血に塗れている。
そんな事は分かっているはずだが。
返事も出来ず俯いた。


何も言わないエースはじりじりと距離を詰め、
今にもこちらに触れそうで、それがとても恐ろしい。


あの炎に触れれば否応なしに過去へ引き摺り戻される。
消えたはずの心さえも燻し出されそうで、言葉もなく、只、怯えていた。




世界一云いたい言葉は





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第百十一弾はエーーース
白ひげに入ってすぐくらい

2019/5/24