それは只、本当に馬鹿な真似で、
だからといってこちらはの生き方に一々、
口を挟むつもりもないわけだ。


別にあんたが好きでやってるんならいいんじゃないの、というやつで、
挙句こちらにも相応の報酬があるとなれば断る道理もない。


この関係は半年以上続いているし、
今のところどちらかが終わりを告げない限りは暫く続くであろう。


一番最初はしこたま酔ったが急に訪ねて来て、
何のようね、とこちらが聞くもロクに答えず、
やたらと積極的に迫って来たもので
(というか、そもそもこのヤサは誰も知らないはずなのだが)
何だかまあ、そういう事かと勝手に判断し、寝た。


それに関しての謝罪はない。当然だ。
事後、泥のように眠ったは翌昼に目覚め、
こちらの姿を見て死ぬほど驚いていた。


だからこちらも一切オブラートには包まず、
お前、フィンクスの事が好きじゃなかたか、という当然の疑問をぶつけた。


はフィンクスの事が好きなのだろうと思っていた。
それはやはり事実で、では何故こんな真似を、と話は続く。



「…わからないんだけど」
「お前、大分酔ってたね」
「…」
「酒に酔って誰彼構わず寝る女、いるよ」



別にそれがどうこうって言うわけじゃあない。
というか、どうでもいい。


こういう女がいた方が色々と楽に過ごせる。
ある程度堪る性欲の処理だとか、気晴らしだとかだ。


何も知らない女とやるより、
それなりに人となりを知っている相手の方がこちらはいいが。



「悪い癖、出ちゃったなぁ」
「本当ね」
「勝ち目がないから本当、無理」



がフィンクスを好きなのだろうな、
とは団員全員が思っているところだ。


クロロが目を付けたこの女は、予備員であり、
欠員が出た際に補てんされるのであろう立場になる。
実際に能力は知らないがクロロが可愛がるくらいだ、
ある程度の実力はあると考えて間違いない。


初見時からこの女はどうにもフィンクスに惚れたらしく、
事ある如く割と露骨なアプローチを繰り出していたのだが、
まあ当のフィンクスが考えられない程に鈍く、
一切通じていないのが現状だ。


この危うさを団長はどう考えているのだろう。
恋で心を病み、思わぬ行動に出る女なのか、
それとも―――――



「あれは鈍感よ」
「…」
「お前の気持ちにも、ワタシとお前がこうなってる事にも気づかないね」



だからどうしたというのか。
こちらの思惑には気づくのか。
そうして、乗るか。


の視線がこちらを捕らえ、僅かに唇が歪む。
ああ、成程。
団長の判断はやはり正しい。


この女は恋なんかで病むようなタマじゃあない、
いいや、むしろとっくには病んでいたのだ。
こちらのよくない誘いを笑って受け、その蜜は貪る。


だからお前は幸せになれないのよとフェイタンが笑えば、
知っているとも笑った。




緩やかな死の感触









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第百十二弾はフェイタン!(H×H)
フィンクスを好きな主です

2019/6/09