、おめー何やってんだよ」
「伊之助こそ何してんの」
「は?バイト」



ターミナル駅から歩いてほど近くのホテル街、その路地裏だ。
ビルとビルの間には生活ゴミが散乱し、
お世辞にもキレイとはいえない空間が広がっている。
当然光取りにもならない小さな窓は開く事がない。


反対側の通りからそこへ逃げ込んだの目の前には伊之助がいて、
その足元には男が二人倒れ伏していた。


何してるのと聞けばバイトだと答える。
おっさんの財布を失敬し、札を拝借している最中に出くわした。


伊之助は見目麗しい男だ。
校内でも有名な美形であり、それを覆す程に素行がおかしい。
素行が悪い、ではなく、最早それはおかしいの域なのだ。


余り詳しく聞いた事はないのだけれど、
両親はおらず一人暮らしをしているらしい。
元々は施設に入っていたらしいが、
度重なる脱走のせいで出禁を喰らったとも聞く。


これまでどうやって生きて来たのかは不思議で仕方がないのだが
(真偽の程は定かでないが、橋の下で暮らしていた事もあるらしい)
彼はこうして生きている。


最近ではバイトと呼びこうして自身に色目を使って来るおっさんを狩ったり、
街中でよくある諍いに首を突っ込んだりして糧を得ているようだ。
その美貌を使えば他にも金を稼ぐ方法は山とありそうだが、
何故かそれ以外を選ばない。



「あんた待ちのおねーさん方、今日もいっぱいいたけど」
「うぜーんだよあいつら」
「とか言いながら腹いっぱい喰わせて貰ってるでしょ」
「メシだけでいーわ」
「喰うには喰うんだ」
「まーな」



やたらと野生児染みたこの男は己が欲望のみに正直に生きる。
腹が減れば喰うし、金が欲しければ奪う。


そんな事より、お前何してんの。
伊之助がもう一度、そう呟いた。




飾り気のないケーキ









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第百十三弾は嘴平伊之助!(キメ学ver)
キメ学の伊之助と只喋ってるだけの話

2019/6/18