あれ、あんたこんなとこで何してんの。
夜半過ぎまで飲み続け、
いや、本当なら朝方まで飲み続けるつもりだったんだけれど、
こっちがオケラだって事はこの町の住人なら周知の事実らしく、
呆気なく店から叩き出されたところだ。


酔いはしたが、こちとらまるで酔い足りない。
千鳥足で知り合いでもいないかとふらついていれば、
橋の欄干に座った、見知った背中を見つけた。


やあやあこいつはいい金づるが見つかったと
景気よく声をかけるも、振り返りもしやしない。


どうしたんだよ、そう無視なんてするもんじゃないよ銀さん傷ついちゃうでしょ。
そう言いながら顔を覗き込めば、
前をぼーっと見つめたままポロポロと涙を零していて言葉を失った。


え、何で。
この人、何で泣いてんの?



「えぇーっと…」
「変なタイミングで絡んでくるの本当、無理なんだけど」
「お前、こんな真夜中に一人で何で泣いてんの?」
「喧嘩した」
「はい?」



え、何これ。
これ、俺が話を聞かなきゃいけない感じ?
すげえ嫌なんだけど?


だってもうこんな、只でさえ中途半端な飲酒で酔い切れてないってのに
(因みに銀時のいう酔い切る、というのは、記憶も何もかも全て失った状態の事だ)
そんな事してたら完全に醒めちゃうでしょうが。


いやいや勘弁勘弁、とか思ってる間にも、
こっちは聞いちゃいないってのにコイツ、勝手に語り出しちゃって。


何か喧嘩したらしーよ、俺ァ聞いちゃいないんですけどぉ。
ていうかお前、付き合ってる相手とかいたの?
銀さん初耳なんですけど??
どこの馬の骨なのかな?
こいつと喧嘩して泣かしてる馬鹿野郎ってのは―――――


まあそう思いつめなくてもいいんじゃねェの、だとか
適当な言葉を吐き出しながらポンポンと頭を撫でれば
フワリとにそぐわない煙の匂いが香りはたと気づく。


面倒ごとに巻き込まれんのは御免だぜと辺りを見回せば、
橋の向こう側に今にも斬りかかってきそうな土方を発見。


ああーもう最悪。何なの今日、俺天中殺?
一気に酔いの醒める音がした。




苦し紛れに口を塞ぐ





拍手、ありがとうございました!
第百十四弾は坂田銀時(土方の彼女)でした!
巻き込まれ体質の銀さん。

2019/7/7