その彼と初めて顔を合わせたのは、中学の同窓会だったと記憶している。
まるで覚えていない同級生がやけにキレイになっていて、
その話で同窓会は持ち切りだった。


こんな子いたっけ、どのクラスだったっけ。
リア充グループは大声でちやほやと騒ぎ立て、
こちらみたいな2軍は遠巻きにその様子を眺めていた。


そんな彼女が同窓会を途中で帰るという話になり
(だったらどうして来たんだよと皆、思った)
迎えに来たのが彼だった。


キレイな彼女にお似合いの、色の白い綺麗な男の人で、
正直すぐに心はときめいた。
話によると青年実業家らしい。
そんな話をするくらいならまだ帰らなくてよかったのでは、と思ったが言わなかった。


その子が帰ってからというもの、同窓会は何だか酷く白けてしまって、
少なくともこちらは二次会にも行かず一人暮らしの部屋に戻った。









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それからは毎度毎度の、詰まらない日常の繰り返しで、
大学に行き詰まらない講義を受けたり受けなかったりしながら
新しいバイトを始めてみたり。


その新しいバイト先の人に誘われた合コンで事態は急変した。
外資系リーマンとの合コンだと聞いていたが男性側の人数が一人足りず、
どういうつもりなんだろうと思っていれば彼は遅れて現れた。


彼だ。あの、同窓会の時に顔を見せたあの彼。
彼はこちらに一度だけ視線を寄越し、何食わぬ顔をして席に座った。


その瞬間、これまで何を見ても詰まらなかった視界に艶やかな色が宿り、
とっくに死んだと思っていた感情が蘇る。


ねえ、こんなとこに来ていいの。
が耳側で囁けば、何の話かな。
彼―――――無惨はそう笑った。


それからはまったくお決まりのコースを転がって、
その日、合コンが解散してすぐに待ち合わせた場所に向かった。
無惨はそこにいた。



「彼女、いいの?」
「君こそ、いいのかい」
「え?」
「彼女がいるって、知ってるんだろ」



無惨の言葉一つにときめく。
おかしい。アルコールのせいだろうか。



「それに、今日会ったばかりの男だ」



何が起こっても知らないぜ。
無惨の指が髪を撫でた。


これがあの子の彼氏だから、だとか誰かの彼氏だから、だとか、
そういう事ではないはずだ。


そんな危うい感触を楽しむ程、人間性は腐っていないはずだが。
いや、わからない。
こんな一晩の話、明日になれば速攻で拡散しよう。


時めく胸をどうにか抑え、人の男に寄り添う。
いつになってもこの夜は明けないのだと、知りもせずに。




雑種のプライド





拍手、ありがとうございました!
第百二十二弾は現パロ無惨でした!
キレイになった同級生は鬼ですし、
この後、この主も喰われます

2019/11/24