お前、あの男のどこがいーの。
顔を合わせる度に伊之助はそう言う。


どこも何も、全部よ全部。
毎回そう返す度に、全部ってどこだよ。
至極不思議そうにそう返す彼の気持ちは分からないでもない。
何故なら自分自身、あんな男のどこがいいのか分からないでいるからだ。


そもそも何故、伊之助がこんなクラブにいるのかと言えば、
彼は(本人にその自覚はまったくなかったとしても)
高校時代から至る所で写真を撮られ、
勝手にインスタのアカウントを作られる程の人気者で、
本人の知らぬところで人気は急上昇。
ここ最近では雑誌にも取り上げられるようになった。


伊之助本人にはその気は更々なかったのだけれど、
大人達は彼をよく見ているもので、食い物でつっているわけだ。


写真を撮らせるとタダでメシが喰えるんだよと豪語する伊之助を見ながら、
ああいう生き方もあるんだなあと感心した。


そんな伊之助も業界の人とかかわりを持つにつれ、
こういった場所へ足を運ぶ回数が増えた。
というよりも、業界の人はこういった場所に伊之助を連れて来たいのだ。
そうしてお披露目をする。


どうやら最近はギャラも上がったようで、
クラブに顔を出してはスミノフ片手に群がる女達を払いのけている。


伊之助が声をかけてくるのはとは同じ高校だったから。
たったそれだけなのに物凄い優越感だ。


だけれど今、はそれどころでない状況に置かれているわけで、
それこそ今このクラブのVIPルームにいる男に弄ばれてる最中です。



「別れろって、マジで」
「それが出来ればいいんだけどさぁ」
「何で出来ねーの」
「そういうもんじゃない?こういうのって」
「いや、わかんねー」



俺お前の事、好きだから嫌なんだよな。
伊之助がさらりと言うその『好き』が『良いヤツ』と同義だという事を知っているのは、
少なくともこのクラブ内ではだけだ。


だから私はいい気にはならないのだけれど、
私を弄んでいる男がちょっかいをかけている女が
悔しそうな顔で見て来るのはいい気分だし、暫くはこうしていようと思う。







不純物ゼロ






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第百二十五弾は現パロ大学生伊之助でした!
弄んでるVIPの男は業界人童磨です
*カーディガンを業界巻きしてます

2020/2/03