酒瓶を片手に『頼もう!』だなんて
威勢よくやって来た段階で追い返すべきだったのだ。


風柱様の屋敷に土足で何の用だよと言えども、
今日という今日は許さない、だとか、はっきりさせる、だとか
意味の分からない事しか言わないわけで、追い返す気力もなく招き入れた。


こちらの方が(少しとはいえ)先輩なのにタメ口だし
(まあ、そいつは俺も人の事は言えねェんだが)
柱としてのプライドはねェのかと言えどもそもそもがそういう話ではないらしい。


確かにこれまで幾度も手合わせはしたし、その都度引き分けといった有様だ。
だから面倒になり招き入れたのが大体三時間前の出来事。
死ぬほど酒に酔ったに、滅茶苦茶絡まれているところだ。


しかも、その絡み方が酷いモンで、どうして恋に落ちる事が出来ないの?ときたもんだ。
どうしてもこうしても意味が分からねェ。俺にしな垂れかかってんじゃねェ。


私はこんなに実弥の事が好きなのに、どうして実弥は答えてくれないの?
なんてしな垂れかかって言われても、
こっちだって何て返しゃいいのか分からねェし、
別に俺だって心閉ざしてるわけじゃあねェ。


でもお前はバカだから、
暑いとか言って胸元を俺以上に肌蹴させるし、太腿だって丸出しだ。
そんな成りだから、こっちだって視線を逸らしてるってのに、
口が堅いのは酒が足りないんだ、とか何だとか、
更にバカがバカを重ねるような事を言って退ける。



「お前酔い過ぎだ―――――」



そう言いかけた俺に接吻ときたもんだ。
口の中で温く溶けた酒の味が舌越しにい伝わり、
ここまでされちゃあ流石の俺も大人しくしちゃいられねェ。


ってな時に聞こえて来るのはバカ女の寝息で、
散々引っ掻き回した挙句に寝落ちするたァいい度胸だ。


恋に落ちれねェのはお前がバカだからだよと呟いたが、聞こえるわけもねェか。




かわいいだけの嘘





拍手、ありがとうございました!
第百二十七弾は鬼滅より実弥でした!
ちょっとコミカルというか、甘め?
せめて夢くらいは好きに見せてやってくれ

2020/4/06