もうヤダ、こんなの本当無理。
鳴らないスマホを前に待ち続ける無駄な時間だとか、
何の気なしにくれる売り物のお菓子だとか、
面白かったからって貸してくれた本だってそう。
私の心を弄んで、どうせ果たす気のない約束ばかり増やして、
だけれど私もバカだから毎度毎度、
同じ事だと頭では理解っていながらも期待して無駄に傷つく。
分かっている。罪に問われるべきはトレイだと思う。
だけれど誰よりもバカなのはこの私で、罰されるべきはどうしようもないこの心だ。
新しい学校に編入してからすぐに仲良くなった子は疑いの余地もなくいい子で、
NRCの生徒だというその子の彼氏に出会ったのは半年前の出来事だ。
一目見た時に気づいた。
これは。この男は同族だ。
当然、彼女は何も知らない。
トレイは彼女の事を何よりも大事にしているし、私だって同じだ。
私達二人は彼女を間に挟み誰よりも愛し、歪んだ遊びを続けている。
遅い時間にわざとスマホを鳴らすのだってよくない感情のなせる業だし、
彼女の声の後ろから聞こえるトレイの声に得体の知れぬ感情を抱く。
スピーカーで話しながらメッセージを送る。
会話越しに聞こえる受信音。
頭がおかしくなりそうだ。
いや、きっと。なった。だから、
「もう無理、終わり。終わりよ」
「どうした、。急に」
「別に、何も。その気がなくなっただけ」
「ハハッ、笑えるな」
「何?」
「お前の負け」
ほら、こうやって人をバカにして。
「俺の言った通りになったろ」
「…」
「お前は俺を好きになる」
そう言いながら当たり前のように触れて来る。
同じ手で彼女に触れて欲しくない。
そんなに容易く、あの娘に触れないで。
すぐに口付ける距離感で視線を逸らす。
首筋に口付けるトレイは勝負に勝ち興奮しているようだ。
負けた私はそんな気持ちになれないでいる。
「お前は俺から離れられないよ」
「…」
「それに、あいつを捨てる事も出来ない」
「…」
「残念だったな」
だからこうして泥沼にハマってるんだよとトレイは笑う。
こんな男にあの娘の心が奪われている事実が許せない。
だからって、お前も同じ穴の狢なんだよと、トレイが囁いた。
踏み潰した白い花
拍手、ありがとうございました!
第百三十一弾はツイステより黒トレイでした!
性質が悪すぎる
君、本当に学生さん?
2020/5/24