突如振りだした雨から逃れるように近くの古びた屋敷に駆け込んだ。
この世界に来てからというもの、
ありとあらゆる事象が物珍しく一々驚く事も少なくなったのだが、
この天候には流石に度肝を抜かれた。


空一面に黄色や緑の稲光が走り回り、
その数秒後には数m先さえも見えなくなった。
クルーウェルから手伝いを頼まれ入った山の麓での出来事だ。


次の授業に使う珍しい鉱石を取る手伝いをしてくれないかと
声をかけられたのが丁度金曜の夕方の事で、
別に用事もないしいいですよと返した。



「山の天候って変わりやすいって言いますけど」
「いいや、そういうのじゃないな」
「ええ?」
「仔犬共が気づいたのさ」
「えっ?」



雨に濡れたクルーウェルは普段の五割り増しで美しい。
うっかり見惚れてしまう程にだ。
そこでふと気づく。


この滝のような大雨が止まない以上、ここでこうして二人きりだ。
この、古びた屋敷で。


いや、いやいや。とはいえ教師と生徒だ。
そんな過ちは起き―――――



「こっちに来い、雌犬」
「えっ、雌?」
「風邪でも引かれると厄介だ」



この屋敷の中を何故だか知った風に歩き回るクルーウェルを見ながら、
先程から死ぬほど通知の入っているスマホを取り出す。


メッセージの通知が20件を超えている。
チラッと見えたのはエースからのメッセージで確か内容は、



「あ、あっ!?」
「こいつは俺が預かっておこう」
「え、何で?」
「仔犬共がキャンキャンと煩いからな」



邪魔になるだろうと笑うクルーウェルにスマホは取り上げられジ・エンド。
この様子ではどうやらこの屋敷はクルーウェルの持ち物のようだし、
そうなると先程チラ見したエースからのメッセージにも信憑性が出て来る。



!そいつお前の事狙ってるから!』



そんな事あるかなあと思う心半分、
実年齢で考えれば違法ではないのかな、だとか
(ここの人達は聞かないけれど元の世界では成人してます)
色々なそれこそ私事で頭がいっぱいになっていれば早く来いと鞭が鳴る。
ふらふらと、誘われるがままに向かった。




この世界はフィクションです





拍手、ありがとうございました!
第百三十三弾はツイステよりクルーウェル先生でした!
苦肉の策で元の世界では成人済みという謎設定
迸る雷はこの件を知ったツノ太郎のご乱心です

2020/6/14