口にした事はなかった。それは互いにだ。
だから、胸中を探りあう事になり、何となくの予想、それだけで憶測を立てる。
はエースを想っていると、確信まではいかずとも思っていたのだ。
ティーチを追い、船を出て行ったエースの事を
ずっと待ち続けているものだと思っていた。


故に戸惑っただなんて言えば、それは言い訳になるのだろうか。
分からないが、抱き締める腕が躊躇したのは確かだ。
二人きりになるのを恐れたのもそうだし、
何より一番恐れていたのは歯止めが利かなくなる事で、
がこちらにしな垂れかかれば、もう我慢が出来なくなると分かっていた。


戻る確証がない相手を待ち続けるのは疲れる。
側にいないだけで酷く疲れる。身も心も。
だから、そんな彼女がすっかり疲れきってしまったからといって、
誰も責める事は出来ないだろう。少なくともマルコはそう考えた。


だから、が何も言わず、
しな垂れかかってきた時に一瞬だけ躊躇したものの、その身を受け止めた。
何も言わなくていい、何も考えなくていいと囁きながら、
その実、自身に言い聞かせる。
ずっと手にしたかったものが、こんな形で手に入るだなんて、
そんなものは、決して望んでいなかったのに。


マルコの腕の中で眠るは軽い寝息をたてている。
何も変わらない闇の中、ぼんやりと宙を見つめ、
この遣り切れない気持ちが後悔と呼ばれるものだと、


気づかない振りをした。



い 労わり慰め合った日


拍手、ありがとうございました!
第二十三弾もマルコ(でばがめ風)でした。
マルコ、立て続けすぎじゃねえか。

2010/5/31