の事は知っている。
知っている、というか知らないでいる方が無理だろ。あんな女。

男だらけのこの学園内で女だという事実を
これっぽっちも隠さず堂々と振る舞うような、そんな女だ。
気後れせず、何なら誰よりも堂々とした立ち振る舞いで学園内を闊歩する。

性的に飢えた思春期の野郎共の中に放り出されたら
少しは委縮したっておかしくないだろうに、むしろその逆。
端的に表現すると女王様だ。

そんな女だから当然目を惹く。
今一番魅力にあふれ咲き乱れる徒花。
己が魅力を熟知し存分に見せつける。
最も高値で売れる相手の手を取り他には目もくれない。

真っ先に手を出したのはサバナクローのレオナ寮長。
ゴージャスな王族を選ぶ辺り、打算的で嫌いじゃない。
分かりやすい女は好きだ。
はあえてその辺りを明け透けにしている。
かかって来いと言わんばかりだ。

カリムにも当然手を出しかけたが、カリムはカリムで周到な部分がある。
そういう女が昔から周囲にいたからだろう。
とても上手く交わした。

そんな場合もは焦らない。
カリムに話しかけながら、その後ろに立つ俺を見ていた。
だったら、そうだろ。そりゃあ、そうだ。

その日の夜、オンボロ寮に出向きそのままヤった。
据え膳食わぬわ、ってやつだ。



「お前、別に誰彼構わずってわけじゃねーんだな」
「失礼ね」
「イケメン好きならまずオレじゃん?」
「お兄さん紹介してくれる?」



一度寝ると背景がよく見えだす。
この女と関係を持ったヤツ、この女に気があるヤツ。
この女が気のあるヤツ―――――



「おい」
「何?」



食堂でいつものメンツとバカな話をしているに声をかけ
振り返ったところで口付けた。
一瞬、大きく目を開いたは瞬時に俺の思惑を察し口を開く。
そのまま舌を入れそれこそ熱烈なベロチューを交わす。

こんな時にだってこいつは声一つ荒げず、
それこそ驚き身を捩る事もなくまるでゲームの様に唇を渡す。
分かってはいたが余りにも素っ気なさ過ぎてこちらもその気が失せた。
何事もなかったかのように唇を離し踵を返す。



「な、何か言えって!」
「何も言う事なくない?」
「お前マジでそう思ってんの!?」



腹の内こそ隠し誰彼構わず愛想を振りまくお前が悪い。
少しは後悔しろと思うのもこちらのエゴなんだろう。
だから俺も、こちらを見て来る幾つもの目に対し、
どうかしたのか?そう笑うのだ。




獣に告ぐ、本能を消去(デリート)せよ





拍手、ありがとうございました!
第百四十二弾はジャミルでした!
ジャミルに心の声でもいいから
ベロチューと言わせたかったんだ
後悔はしていない



2020/9/22