花を待とう



   ワンルームマンションにレオナとラギーがいる、という現実を受け止める事が出来ず小一時間だ。レオナはベットに寝転がりゴロゴロとしているし、ラギーは何か、ごはん作ってますね。彼。

キッチン狭すぎなんスけど、って笑いながら何かしら作ってますね。あの冷蔵庫の中身で作れるんだからいやはや大したものである。いや、である、ではない。



「え???何してるの?」
「おい、テレビが見えねーだろ」
「え?ごめん?(何で私が謝った?)」
「あー腹減った。おい、ラギー!」
「もう少し待って下さいって!ここ、コンロ一口しかないんスよ」
「わっ、私、自炊しないからさ」



基本的にデリバリーかテイクアウトで生きていく事が出来る現代社会の弊害です。だって仕事も遅くなるしさぁ、終電間際で帰って自炊は流石に無理でしょ?だからこう、通勤に丁度いい立地に私は住んでいるわけ。うん。誰も聞いてないけど。



「花嫁捜しに来たんでしょ?」
「はぁ?」
「え、違うの?」
「それ、こいつらじゃねーの」
「え?」



レオナがリモコンで差したテレビの画面に視線を移す。プライベート・ジェットから従者と共に降りて来た皇子は愛想よく手を振っていた。褐色の肌に白い紋様が鮮やかに写る。



「あー…これだわ」
「あいっかわらず派手っスねぇ、カリム君」



にこやかなカリムの後ろにはジャミルがぴたりとついており、ああ、相変わらずだな、と笑えた。笑えたのだが、この人達は何をしているの…?何でこんな大々的にいらっしゃってるの…?SNSでも大量に拡散されまくっている笑顔のワンショットが地上波に溢れている。



「おまたせしました~!」
「遅ぇ」
「あったかい内に食べちゃって下さいね!さんもほら!」
「まるで自分の家のように…!」



あの冷蔵庫の中身からよくもここまで出来上がったな、と感心する程のご馳走が狭いテーブルに溢れている。レオナとラギーと私で囲む食卓はぶっちゃけ変な感じがした。