まったく、この世は無駄に杜撰なもので、
だからこんなにも嫌な思いを抱いているわけだ。
何が理由か、何が原因なのかは何となく分かっている。
気づけばパラついている雨にしたってそうだし、
急に冷え込んできた季節にしてもそうだ。
こちらの意思など関係なしに物事は変わり行く。


の事を思い出してしまった。
思い出の品など何一つないのに、何かの拍子にふと思い出す。
別に雨が降ったから、だとかそんな理由付けは必要がない。
只、思い出してしまう。
それは最悪な展開であり、だからローは溜息を吐く。


兎角、衝突の多い二人だったと思う。
何かにつけ意見は食い違い、どちらも引かないものだから、
感情が穏やかになるまで結構な時間を費やした。
どちらも自分が正しいと思っているから性質が悪い。
確かに若さの仕業でもあっただろう。
今、同じ問題が二人の間に起きたとしても、
同じような展開になるとは思えない。


あの最悪な夜、泣きながらがローを突き放した瞬間。
そうして訪れる孤独。一人の部屋。
の存在が自分にとってどういうものなのか、
それを知るにはいい機会だったが、
如何せんそれから先の展開が最悪過ぎて、こうして思い出す事も億劫だ。


何となくセックスで誤魔化す事にも無理が生じ始めたし、
同じような展開に辟易ともしていた。
互いが互いを求めすぎて、酷く淋しい状態だ。
淋しさにぱっくりと喰われた状態。
だから、は。


「あぁー。頭が痛ぇ」


急激な気圧の変化に身体がついて行かず、
こめかみ辺りに鈍い痛みが残る。


仲違いをし、はこの船を去った。
ベポ達はが消え、寂しそうな顔こそしていたが口を挟まなかった。
まあ、とローの問題だ。
すっかりのいなくなった部屋では何一つ問題など起きず、
久方振りに平穏な時間を手に入れた。じきに飽きた。
何を見てもを思い出すと気づいた。


で、自分と同じだろうと思っていたが、
自らの船を持ち、だけの旅を開始する。
真意は分からない。今でも分かっていない。それでもだ。


「キャプテン!」
「…何だ、ベポ。俺の部屋に入る時はノックを―――――」
「又、来たよ!」
「…又かよ」


二人の間には何もなかったかのように振る舞い、
こんな風に顔を見せるが信じられないだけだ。
蟠り一つなく、昔からの知り合い宜しくは顔を見せる。
笑顔で、何事もなく。


だから、こんな部屋で思い出すの事は、あってないものなのだ。
ローの心の中にしかない。
この部屋の中でだけはローのもので、だったら今は誰のものなのか。
一言も口には出さないまでも、
もしが他の男とどうにかなってしまえば、
少なくともそんな話を聞いてしまえば
自らが何を仕出かすか分からず、やはり頭が痛いと一人、呟いた。



し 死んでも離さないと誓い合った日


拍手、ありがとうございました!
第二十四弾はローでした。
元彼女設定、多いよね。ロー。

2010/6/10