暇潰しに世界征服



   常連とたまにノリ打ちをしている若い男の子だと思っていた。は駅前の古いホールに週末だけ派遣されているコーヒーレディをしていて、やけに若い子が打っているな、と思ってはいたのだ。


店員に聞けばたまに来る男の子で大変に礼儀正しく常連たちにも気に入られているらしい。いつもと同じ繰り返しに辟易としていた。


そんなある日、その男の子が珍しくコーヒーを買いに来た(いつもは常連たちが缶コーヒーやら何やら差し入れをするのでわざわざ買わないのだ)いらっしゃいませ、と顔を上げた瞬間に恋に堕ちた。あんた、そんな顔してたっけ?



「…どうした、女」
「あの」



同じ顔をしているのにまるで別人のようで言葉が出ない。そのまま彼は席に戻り、こちらはこちらで仕事に戻る。まばらな客付のこのホールは週末であっても暇で、仕事に没頭して忘れる事が出来ない。島内を歩く時も盤面越しに彼は私を見ていて、どうしようもなく胸がざわめく。



その日、退勤し裏口から外に出たは彼に捕まりそのまま店の外トイレでセックスをした。やけに手慣れた素振りで年下とは思えなかった。



「こんちはー」
「あ、どうも」
「お仕事頑張ってくださーい」



それから幾度か同じような事が起こった。彼は気まぐれに外口でを待ち、外トイレで精を吐き出し消えていく。射精された後は熱に魘されたような感覚に陥り意識が朦朧とする為、彼を追いかける事が出来ない。



「…」



だからは未だに彼の名を知らない。だけれど今しがた挨拶をした彼が彼でない事だけは分かっているのだ。