あんた、あたしの事を殺しに来たのと吐き捨てたは、
シャンクスに一瞥さえくれずお決まりの生活パターンを繰り返す。
鍵を開け部屋に入り、玄関に鍵を置く。
高いヒールを脱ぎ捨て、部屋に通じる廊下の途中に置いてある
棚に上着を脱ぎ捨て、部屋に入る。


ドアを開け、薄暗い室内を見渡し明かりをつければシャンクスがおり、
一瞬だけだが身体が強張ったが、それよりも疲れの方が色濃かったのだろう。
よぉ、だとか久しぶりだとか。
シャンクスの声に反応するまでもない。


買い置きしていたワインとチーズが
無造作に開けられている様子だけは腹が立ったが、あえて口には出さない。
日常が一気に非日常へ変わった瞬間だ。何故この男がここにいる。


「いいグラスだな、
「何してるのよシャンクス」
「お前の事を忘れちまいそうでな、顔を見に来た」
「忘れてくれて、構わないけど」


色恋沙汰だけは誰かのせいにしたくなく、
こんな男に弄ばれたと思う事も嫌だった。
全て自己責任、誰かのせいじゃ、あんたのせいなんかじゃない。
あたしが疲れている理由は。


「しかし、少し見ねぇ間に随分荒んじまったな」
「海賊が大挙し始めてからこの有様よ」
「お前の事だ」
「…」


以前は温厚な観光地として有名だったこの町も、
すっかり治安が悪くなってしまった。
突然、海賊が大挙し始めた理由は分からない。
それに伴い海軍も基地を置き、人口密度は爆発。
盛り場が増え始め、見知らぬ人間ばかりになった。


「それで、一体何よ」
「悪ぃな。一つだけお前に嘘を吐いちまった」
「何?」
「お前を見かけてな」
「…」
「俺を忘れちゃいねぇか確かめに来た」


振り返り勢いよく右手を振り上げた。
涙が零れてしまわないよう、必死に我慢をしたが、
そんな事はもうどうでもいい。
何も言わないで勝手に姿を消したのはあんたでしょう。


それなのに未練がましく、
シャンクスからもらった指輪を
右手の薬指につけて生活している自分が何より惨めで。


シャンクスの頬を打った瞬間、指輪で傷がついた。
じっとこちらを見つめているシャンクスは、そのまま手を掴み口付ける。


「…愛してるぜ、
「…!!」


愛している、その言葉をこんなにも残酷に
囁ける男がいるだなんて信じられず、
手を離してくれと呟いた。
そんな、こちらの意思が通じる相手だとは思っていなかった。



も もう終わりにしたいと思わなかった


と言えば嘘になるが



拍手、ありがとうございました!
第二十六弾はシャンクス(不法侵入)でした。
お頭は勝手に入って来る気がする。人の家に。
2010/6/19