あの彼女が海軍に捕まったと聞いたのは、
霧雨が降り続く夜の事だった。
最初耳にした時には性質の悪い冗談だと思い、
そんなに馬鹿な事があってたまるかと吐き捨てたが、
目に入る情報源がそれを事実だと知らしめる。愕然とした。


どうしてあの女が捕まったのか。そんな事が起こり得るのか。
様々な疑問が浮かんでは消えたが、全てローの想像だ。
だから、真実には手が届かない。


出発地点は同じだったが、
それから先の進み方や目指すものが違っただけだ。
だからとローは違えた。


至極感情的で、ローの言葉全てに疑問符で返す。
だってあたしはあんたが好きで、
あんたもあたしの事好きなんでしょう。
他にどんな理由がいるのよ。


平然とそう言いのけ、ローの心一つをすっかり虜にしたは、
心を奪ったまま姿を消した。
要するに最悪な女だと思い出は認識している。


忘れる他、手はないと思い必死に忘れようともがき、
ようやく忘れたらこれだ。
本当にお前は、最悪な女だぜ。


「キャプテーン?これって…」
「それ以上言うんじゃねぇ、ベポ」
「だって…」


海軍に捕まった経緯はよく分からないが、
の身柄が拘束されているのは
皮肉にもここから数キロ先の街だ。


ベポ達の期待を宿した眼差しの理由に
気づかない振りをし、どうするかを考える。
気持ちは既に彼女の方へ向かっているが、
何だか素直に従いたくない気もする。


しかし、インペルダウンに連れて行かれてしまえば、
とは二度と会う事は出来なくなるわけで、
選択肢は一つしかないのだ。それでも。


「…迂回しろ、すぐにだ」
「アイアイ、キャプテン!」


助けに来ただなんて言えばはどんな顔をするのだろうか。
涙を流し喜ぶ事はなくともだ。
ありがとうだなんて言うとは思えないし、
どんな反応をするのかはまったく未知数、分からない。


それでも今の今まで居場所一つ分からず、
顔を見る事さえ叶わなかった女に会いに行く、
それが堪らず、浮き足立つ己を戒めた。



た ただ愛してたという記憶だけが


今も私の心の中で


懺悔し続けている





拍手、ありがとうございました!
第二十七弾はローでした。
今回珍しく、二つにしてみてます。拍手夢。
コレと沿った話なんですが、ローは報われていない。
2010/6/25