仮に、一つだけ、たった一つだけの願いを
叶えてくれる妖精なり何なりがいたとしてだ。
そんなものがいたら何を望むか。
元々、夢物語の類は好きでなく、倦厭しているのだが、
ふと思ってしまったのだから仕方がない。


この手からあっさりと飛び立ったの事を考えているのだ。
名残惜しむ事もなく、
さよなら一つも告げず飛び立ったは、今何をしているのか。
涙を流した場合、慰めてくれるようなヤツは側にいるのか。
どうにも心一つ持っていかれたようで、
ここ最近は似たような事ばかり考えている有様だ。


何かあったら絶対に駆けつけるからだなんて言ったものの、
彼女の反応は頗る悪く、これは困った事態になったと内心嘆いた。
自由にするという事は、他の世界を知るという事だ。
これまで世界の全てがローだったが、それ以外の世界を初めて目にする。
どんな影響があるのかは大体、想像していたが、
連絡一つ寄越さなくなるとは思わなかったわけで、
先ほどからローは船内をうろついている。


きっと忙しいだけだって、心配しなくても大丈夫だよキャプテン。
そんなベポのフォローさえ耳に届かず、
根拠もなしに大丈夫だなんてどういうつもりだ、だとか、
そういった油断が大きなミスに繋がるだとか、
言葉尻を掴まえてクダクダ言うものだから、流石のベポも姿を消した。
我ながら面倒くさい男だと思ったが、それもこれも全てあいつのせいだ。


だから結局のところはあたしの事が死ぬほど好きなだけなんでしょうと、
呆れたように言ったの事が忘れられない。
冗談交じりにした軽い口づけにしても、共に戦った記憶にしてもそうだ。
何一つ忘れられない。


だからといって俺を愛してくれというのも何か違う気がして
(そもそも、そんな真似が出来るか馬鹿が)
これまで自分を愛していたであろう女達に、
愛するという事はどういう事なのかと聞きに行こうとさえ思ったが、
愛していなかった事がばれるのも面倒だ。


だから暫くの間は、ベポ達をを苛めて時間をやり過ごそうと思う。


め 明確な嫉妬心に気付いたある日のこと


拍手、ありがとうございました!
第三十一弾も、立て続けでした。
どうにも私は彼をこんな感じだと思っているらしい。
可哀想だが、ベポには泣いてもらおうか…!
2010/7/22