無駄口はいいからハンドルをきってよと、
隣の席では口煩くそう言う。
一々うるせェ女だぜと、こちらも負けじと言い返せば、
辟易としたらしいは煙草を吸い始めた。


この夏島に滞在している理由はバカンスを楽しむ、それだったが、
どうにもドフラミンゴと彼女の二人では楽しむものも楽しめないらしい。
互いに我が強いし、口が減らない。
きっかけは、酒に飲まれたドフラミンゴが発した、
『桃源郷へ行こう』の一言だった。


正直な所、言葉で表す桃源郷がどこにあるのかも知らない有様だが、
何故だかがイエスと答えたもので、まあ行かざるをえなくなる。
のこのこと来たらこの様だ。


気を利かせてオープンカーなんてものをレンタルしてしまい、
走り続けなければならなくなった。
夏島だけあって、暑いのだ。
だからといって、元・海賊だというのにこの女は日に焼けたくないだとか、
そんな詰まらない事を言うものだから、
ドフラミンゴは延々ハンドルを握る事になった。



まったく、それにしても無駄に長い時間を共有してしまったものだ。
何一つご褒美も頂けず、互いの言い分ばかりが常に平行線を辿る。
いや、だから共有する事となったのか。答が出ないから。


「あいつら、腹が立つわ」
「何だよ、又海軍の話か」
「あんたもよく、七武海なんてやってるわよね」
「おいおい…八つ当たりか?勘弁してくれよ」
「あいつらとつるむだなんて、吐き気がするわ」
「奴等は臭ェからな」


海賊を辞めた経緯は聞いていない。
只、ある日突然の方から宣告された。
だからといって関係性が変わる事もなかった。


元より一人の性分だったから、
こうやって同じ車内に二人きりで存在しても交わらない。
決して交わらないのに不愉快でない。
心地いい距離感は永遠に保たれる。はずだ。


「なぁ、おい。いい加減、どこかで休もうぜ」
「ねぇ、あれ見てよ。でっかい海王類」
「俺の話は―――――」


聞こえねェか。
こちらに背を向け、海王類に手を振っているは一切、運転をしない。
疲れるからだそうだ。


だからアクセルを踏み込み、強引にハンドルを切った。
体勢を崩したがこちらに倒れこむ前に腕を伸ばし、
クラッチを繋いだ。


め めでたしめでたし、の、その先


拍手、ありがとうございました!
第三十七弾は唐突なドフラミンゴでした。
彼の話の主人公は我侭が基本です。
2010/9/04