「あら、起きたの?」
「目が覚めちまった」
「何よ、怖い夢でも見たっての?」
「あァ」


船長様が何を言ってるのよ。
そう言い笑う は、どうやらシャワーを浴びていたらしい。
タオルで髪を拭きながら現れる。


正直な所、はっと目覚め
(しかも汗だくだ、相当に嫌な夢を見ていたらしいが余り覚えていない)
右隣に の姿がない事に焦った。
ぼんやりとしか覚えていないが、
がいなくなる夢だった(ような気がしている)


深く考えてみれば、
いなくなる事に対しての不安は過去の出来事が影響しているだとか、
そういう面倒な話になるはずだ。
面倒は極力避けたい為、考えない事にする。


「さっき、近くで事故があったらしいわよ」
「へェ」
「凄い音だった」
「全然、気づかなかったけどな」
「よく寝てたもの、あんた」
「俺が?」
「起こしたけど、起きなかったし」


片方が眠っている時に目を覚ますなんて事はよくあるはずだ。
現に今回はローの方が後に目覚めたが、
一昨日は が寝ている時に目覚めた。


の住むこの街は眠らない。うるさい街だ。
ギラギラと煩く、人々が敷き詰められた街。
こんな場所に を一人置いておきたくなく、
何度も連れ出そうと試みたが今のところ全てが失敗に終わっている。


「みんなはどこにいるのよ」
「どこかで遊んでるだろ、暇を持て余さねェ街だぜ」
「心配じゃないの?」
「俺ァ、あいつらの親じゃねェんだ」
「ここ最近、会ってないから、会いに行こうか」
「勘弁してくれ」
「何よ」
、こっちに来いよ」


夜は眠るもんだろ。
こんな街に毒されてるから真夜中にさえ出て回りたがるんだと言い、
自分がいない間の は外に出て回っているのだろうと思う。
誰と、何をしに。その辺りも深くは追求しない。
端的に、腹が立つからだ。


ベッドに膝を置いた の腕を引き、彼女の身体が腹の上に落ちてきた。
濡れた髪が邪魔で、避けながら口付ける。
派手なブレーキ音と続く悲鳴。
どこかで又、事故が起きたようだ。


で 伝染してゆく優雅な怠惰


拍手、ありがとうございました!
第三十八弾は相変わらずなローでした。
何か、ローは酷く都会的なイメージ…。

2010/9/04