裏切られたと感じた瞬間、何もかもが一斉に弾けた。
腹が立ったのは何もマルコに対してだけではない。
どちらかといえば自分自身に対しての苛立ちの方が度合いは大きかっただろう。


こんな目に遭うのは何も初めてではないのだし、
何度も似たような経験を繰り返し、学んできたはずなのに。
まあ、だから痛むばかりでなく怒りに変更できたのだろうとは思う。


大きな音を立てドアを開け、マルコまで一直線。
全てがばれている事実さえお見通しらしいマルコは
視線一つ変えず、待ち構えたようにこちらを向いた。


「…何だよぃ、
「あたし、知ってるんだけど」
「何を」
「あんたが何をしたか」
「それで」


何をどうしてェんだと言う。
こちらに言わせるやり方が更に気を逆撫でする。


「何のつもりなの、あんた」
「いや、お前も同じだろぃ」
「何?」
「俺が何も知らねェと、まさかそんな風に思ってたわけじゃねェだろうな」


気づけばギャラリーは誰一人おらず、とマルコだけの舞台が整う。
マルコがとある港で女と消え、
どうやら珍しくも久々に買っていたのだろうという話を耳にした。
悪意のない話だったと思う。マルコとの関係は他言していない。


「海軍の味はどうだった」
「何の話よ」
「お前が海軍と寝て、情報を得てる事は知ってる」


そんな事は百も承知だったと彼は言う。
まあそれでも認めるわけにはいかないのだから、
マルコの言葉を聞くだけになる。


「俺も同じか?なァ、
「…」
「俺からも情報を引き出したかったかい」


仕方のない誤解だと知りながら、
それでも目頭が熱くなり、思わず顔を逸らした。
こんなに爛れた生き方の中、
マルコだけが真実だと思っても伝える事は適わない。
信じるに値しないからだ。
だから、この涙は意味を成さない。


「お前の生き方に俺ァ口を出す気はねェよぃ」
「そうね」
「けど」


あんまりにも虚しすぎるじゃねェかと囁かれ、
彼も似たような葛藤を抱いていたのかと今更ながら気づく。
この舞台はきれに整っているが、余りにも淋しく、
無残な主人公を演じるこんなあたしを、
相変わらずの温度で彼は抱き締めるのだ。


し 死んでもかわらない、死んでもわからない


拍手、ありがとうございました!
第四十弾はマルコでした。
比較的シリアスめなマルコ。
というか、他の女に手を出すマルコ…
何か新鮮だったな…。

2010/9/14