最初から手に入らないと分かっていた女だ。
だから、心の中ではそんな存在だと納得し、
口先だけ口説くような、そんな感じ。
顔を見れば軽く手を振り、あの女は俺のものだと嘯く。
それでも手に入らない事は分かっているのだ。


だから今、窓越しに泣いているの姿に動揺している自身が許せない。
女の涙なんて掃いて捨てるほど見てきた癖に、
そんなものには一片の価値もないと思っている癖にだ。
何故、目前の女の涙一つにここまで心動かされる。


音を閉ざす窓ごしに、薄いの唇が思いを模っている。
こんな所に囚われ、何もかも全てを奪われ、それなのに生かされる。
海原であの男が殺され、戦利品のように身を奪われた過去も、
ドフラミンゴは全て知っているのだ。


この窓は果てない距離を抱かせる。
こんなにも薄く、儚い窓一枚でとの距離は涙一つで壊れる、
後の面倒なんてとうに理解している癖に捨て置けず、
この右手は一気に何もかもを打ち砕いた。


粉々に砕け散ったガラスの破片と、僅かに傷ついた拳。
堰切るように抱き合う間にも警報が鳴り響く。


「…待たせたな、おい」
「ごめんなさい…!」
「いや、もう…そんな事はどうだっていいぜ。


ドアを蹴破り、こちらに銃口を向ける警備員に右手を向ける。
片手に抱いたの指先が肩に喰い込んだ。
無碍もなく命を一つ、二つと容易く奪い、
震える彼女を連れ逃避行にでも出かけるか。


た ただ一度の過ちが招くしあわせ


拍手、ありがとうございました!
第四十一弾はドフラミンゴでした。
これもどちらかといえばシリアス風味…?
まあ、焦燥感のある話を書きたかったんです…。

2010/9/16