の言う愛しているなんて、一銭の価値もない。
まあ、それは自身も同じだと分かってはいる。
口先ばかりの応酬は心ばかりが浮かれ楽しく、何一つ残りはしない。
男と女が出会い、化かしあい、交じり合う。
朝が訪れれば全てがリセットされ、同じ事を繰り返す。


「あら、あんた又来たの」
「よぉ、売女」
「帰ってもらってもいい?」
「馬鹿言ってんじゃねェよ」


幾ら金を積んでも、の心が動かなければどうしようもないらしく、
だからドフラミンゴはこうやって顔を出しているわけだ。
暇を潰しているとも言うし、上手い暇の潰し方とも言える。
この眠らない街を動かす彼女は魅力的だ。
欲望の操り方を知っている。


「あんたがいたら、商売にならないのよねぇ」
「俺ァ、金払いはいいぜ。問題ねェだろうが」
「そういう問題じゃないのよ」
「そういう問題だろうが」


直接、客を取らないは、この部屋から街全体を見渡している。


「そういうのは卒業したの、残念ね」
「少しはめかしこめよ、なァ」
「ここは、あたしの家よ?めかしこむ必要なんてないわ」
「客の前だぜ」


普段よりも随分ラフな格好をしたは、
一つに束ねた髪を解く事無くコーヒーを淹れている。
こんな夜に、階下は煌びやかな夜にコーヒーを渡すは、
きっとこちらを馬鹿にしているのだろう。
仕立てのいいソファーに腰を下ろしたまま、
室内をじっと見つめ、そうして見渡す。
生活観のない、以外の気配もない室内。


「早く出て行ってよ」
「どんな言い草だ、おい」
「人が折角淹れたコーヒーに口も付けないで」
「頭が痛くなるんだよ」
「子供じゃあるまいし」
「なァ!」


こうやっての手首を掴んだ心さえ偽りなのか。
眉間に皺を寄せ、こちらを見下ろすの心も偽りなのか。
まあ、どうでもいいと言える。


この街では心なんて等価ではない。
心を売る女と、身体を買う男。たったそれだけだ。


の身体を引き寄せた。気づかず笑い声が漏れていた。


愛を知らない子供の群れ


拍手、ありがとうございました!
第四十八弾はドフラミンゴでした。
何ていうかこう…
オフのドフラミンゴ?

2010/10/4