気持ちもない癖に触らないでと、馬鹿な言葉を発してしまったものだ。
それはお前も同じだろうと言われれば返す言葉もない。
そんな術は持たない。


終わりなんてハナからない関係に甘んじていたのは
何も片方だけではないのだ。
だから、こんな夜にもはローと一緒にいるし、
キッドは他の誰かと一緒にいる。


どうしてもキッドを独り占めしたくて、先ほどの言葉を吐き出した。
彼は、少しだけ困ったような表情を浮かべ、
すぐに馬鹿な事を言ってるんじゃねェよと呟いた。
そう。非常に馬鹿な真似をしているのだ。


所有物には名前さえ記したいと、
独占欲の塊のような男と暮らしながら、こうして心は逃げ出している。
余りにも息苦しくて、最初は生き抜き程度のものだったのに。


最初、キッドは気にも留めない様子でこちらを見据えていた。
あぁ、何だ。テメェはトラファルガーの所の。
そう言い、詰まらないものを見るかのように視線を落とした。


「落ち着かねェな、
「何?」
「誰を待ってるのかは知らねェが、ほどほどにしとけよ」


あの人にばれちまう。
全てを見透かしたように口を挟むペンギンも同じだ。
真夜中に部屋を抜け出し、キッチンで冷たい水を飲む理由も、
そこに顔を出したペンギンも。偶然なんてない。


「こんなに愛されて、一体何が不満なんだよ」
「不満なんてないわよ」
「だったら、馬鹿な真似はするなよ」


まるで水のない水槽、その底で跳ねる魚のように息が苦しく、
もう一杯水を飲んだ。
あの部屋へ戻ればローが眠っている。
この海のどこかで、キッドも眠っている。


実を結ばない花


拍手、ありがとうございました!
第五十二弾はキッド(ローじゃないんだ…)でした。
キッド夢のはずが、とんだ夢に!
ペンギンとか出してみましたけど(だからどうしたと)


2010/10/20