撃たれた、らしい。
大体にして相応の場面、こういう見せ場も必要不可欠だと一瞬感じた。
実際に敵として現れた人物は予想していた人物だったので驚きはそうなかったし、
負けるだとか勝つだとかそういう考えもなかった。
生きるか死ぬか、まあそれだけのシンプルなゲームだからな。
俺達の生き様は例えるならゲームで、勝者と敗者しか存在しねェ。
例えば目前にて銃を構える女が、心の底から愛している女だったとしても、
それは何一つとして変わらない。
喜怒哀楽の何一つ揺れ動かず、口の端さえ歪む。


こんな生き方をしていなければ、
普通、こういう怪我をする場合は事故か、まあ暴発とか流れ弾だとか。
それか悪意を持った人間に狙われる、とか戦場で敵に撃たれる、とか。
全部ひっくるめたとしても悪意はあるはずだ。
迷いもあるだろうし、汚い倒錯もあるだろう。
それは、いいんだ全然構いやしねェ。
お前が俺を裏切っただとか、ハナから信用してなかっただとか、
そんなのはもう、どうでも。


空中にポン、と浮かんだ球体。それを長い棒で弾くのはゲーム。
悪意のない遊び、満足もしない遊戯。
それの中にはどうやら水分が大量に含まれているらしい。
弾けば、破れてしまうだろう。


こんな力を持ち合わせている以上、
自分が死ぬっていう実感がなかなか湧いてこなくてな。
撃たれても撃たれても―――――
いくら血を垂れ流したところで死なないような、そんな妙な錯覚に蝕まれていた。
死ぬ事が恐ろしかったのかも知れねェし、本当に分からなかっただけかも知れねェ。
そもそもが、そんな鉛玉なんざあたりゃしねェんだ。
この身を貫くのは彼女の悪意。
まあ、そんな事どうだっていいんだよ、今更。


何気にそれを突いてみた。
予想通りそれはパチンと弾けてそれで仕舞い。


「…なァ」
「…」


それはもう容赦なく、追い詰める。
パチンと弾け飛んだ俺の思考回路、
ごった返した思い出の中を逆流するように、
死んでゆく人間には意味のない事柄を考えた。
明日の事だとかお前の事だとか。


愛し愛されるという妄言


拍手、ありがとうございました!
第五十六弾はキッドでした。
むかーし書いた奴を若干手直ししたやつです。
(名前変換はありませんでした)


2010/11/14