波のざわめき一つ起きない穏やかな午後に、
何とも相応しくない思いを抱いている。
物事には終わりがくる。必ずだ。
終わらない事なんてないし、それではつまらないだろう。
終わるから楽しい。
そんな理はとっくに知っていたし、不思議にも思わないはずだ。
それなのにどうして、心が淋しくなるのだろう。


「…あんた、優しいのね」
「あァ」
「真に受けないでよシャンクス。分かってる癖に」


本当は優しくなんてないって。
彼女の言葉が耳に残らず、カモメと共に飛んでゆく。
青空に吸い込まれるようにだ。
光に晒された海原は苦しいほど美しく、
この景色だけが永遠のに変わらないのだと思い知らされるのだ。
隣にいるは相変わらず美しい。
恐らく、これまでもこれからも変わらず美しい。
そんな事は知っている。


「どうして一緒にいられなくなるのかしらね」
「まったくだ」
「同じ道を歩けない理由は何かしら」
「同じ人間じゃ、ないからな」
「なれなかっただけよ」


望んでもいなかった癖に、だなんて今更言えた道理はない。
片時も離れたくなく、側にいる生活を選んでも結局はこうなる。
その都度、同じ事を繰り返す己に嫌気が差し、馬鹿な真似をしたと呟く。
人を愛する事は馬鹿な真似なのか。
いや、違う。
同じ事を繰り返す、それが馬鹿な真似なのだ。


「でも、あんただけのせいじゃないわ」
「…」
「多分、あたしも同じ事、考えてるのよ」


心を見透かされた気がして、思わず振り返る。
こちらを見つめるの眼差し。真実を知る眼差しが己を射抜く。
詰まらない身体を寄せ合う事も出来ず、迫り来る未来ばかりを見つめていた。


真実を知る眼差し


拍手、ありがとうございました!
第五十九弾もシャンクスでした。
完璧な自然消滅。


2010/11/28