口を開けば嘘を吐くエースは、どうやら少しも悪びれていないらしい。
今に始まった事でもなく、何故が怒っているのかも察さないのだ。
口で事細かに説明したら何となく分かったような振りはする。
だからといって理解はしないまま同じ事を繰り返すのだ。


これまでも幾度となく繰り返された。今更、腹もたちはしない。
このまま、エースの他愛もない嘘をさらりと受け流し、
上辺だけ楽しい生活を繰り返す。
共に暮らし、戦い、生き、そうして死に―――――
笑えない。それこそ笑えない話だ。
まあ、そういう風に物事を考えるようになれたのも、
このエースと出会ってからなのだし、
その辺りを思い起こせば結局はエースに終結する。


あの男のように平然と嘘を吐き、
その場を取り繕い生きてきたのはも同じだ。
嘘に嘘を塗り重ね、人のものばかりに手を出す。
きっと、こうして。


「何だかんだ言いながら、よっぽど俺の事が好きなんだねェ」
「そんなの、あんたも同じでしょ」
「そりゃあ、どうだか分からねェが」
「どうしてそこだけ素直じゃないのよ」
「そんなのは」


お前も同じだろうとエースは笑う。
彼の指が唇に触れる。
キスをする数秒前の感覚を見つめていた。


(愛したのは)






拍手、ありがとうございました!
第六十七弾はエースでした。
こんな愛し方しか出来ない男。


2011/3/30