一言も言葉を交わさず部屋を出て行く男を見送り、優しくない男だと一人呟いた。
いや、元からちっとも優しくない男だった。
だから別段変わった事ではないのだ。
そうやって自身を納得させ、こうして日をやり過ごす。
その日暮らしを謳歌出来るだけの日銭をこうして稼ぎ、日々と身体を消費させ生きる。
生きる理由があるとは思えないが、どうしても腹は減るし喉は渇く。
だから一番楽な生き方を選んだ。


どうしようもない身体を起こし、
くすんだ窓から見える小さな港町を見下ろせば、
遣る瀬無い感情に身が押し潰されそうになった。
どうしてこんな事になってしまったのか。
そんな、他愛もない事を考えた。
いや、暇さえあれば常に考えている。
どうしてあたしは一人になってしまったの。


「邪魔するぜ」
「休業中よ」
「そう固ェ事、言うなよ」


窓から見える景色は白く濁り、四季の色さえ見えない。
時代の終わりを目の当たりにし、それから色は全て消え去った。


「タダでやれる女がいるって聞いてよ」
「あんた、タバコ持ってる?」
「…あぁ」
「だったらそれでいいわ」
「…」


白く濁った窓には眼差しの尖ったシャンクスがうつっている。
幾重もの時代を乗り越えた男はそうしてそこにいて、いつまでも色を成さない。


愚かで優しいひみつのうわさ





拍手、ありがとうございました!
第六十九弾は又してもシャンクスでした。
今回は主人公が酷い。

2011/4/30