あの女は呆れるほど優しかった。
顔を合わせれば溜息を吐き出す程度に優しかった。
何故そんなにも優しくいれるのかと聞いた事がある。
お前はどうしてそんなにも、間抜けなほど優しいのかと。
は困ったように笑い、そんな事はないと嘯いた。


「…どうしたのよ」
「…お前か」
「こんなに荒れる必要はないでしょう。勝手な真似をして。怒られるわよ」
「うるせェな。分かってんだよ、そんな事ァ」
「だから怒られるのよ」


皆殺しにした理由は特にない。心の赴くままに。それだ。
どうしようもない苛立ちが抑えられず、気の向くままに炎を滾らせた。
この身体が炎で出来ているから、
というわけではないのだろうが感情の抑制が苦手だ。
頭に血が昇ればすぐにでもリミッターが振り切れる。
ふり幅が余りにも短いのだろう。


「そんな生き方をしてたら、持たないわよ」
「長生きしようだなんて、思っちゃいねェもんでな」
「そんなのは、あたしだって同じよ」


あたしも、あんたも、みんなも。
の指先が触れ、患部に触れた。
もっと奥の方、深い所の傷口にも触れてくれよと思うが、流石に口には出せない。
この女ならそこにも容易く触れる事が出来るはずだ。
恐らくの目にはうつっているはずだ。


「マルコに言われて来たんだろ」
「…」
「どうだった?俺の戦い方は」


惚れちまいそうだったかい。
焦げた指先の震えは恐怖からではない。
無理矢理に強がる自身をひた隠そうと目論んだ結果だ。
それに気づいたのか気づかないのか分からないは馬鹿ね、
そう呟きエースの頭を撫でた。


迷いなき切っ先





拍手、ありがとうございました!
第七十一弾は青年エースでした。
…可愛いよね。

2011/6/20