「お前、何してやがる」
「別に、何も」
「何もねェってわけがねェだろうが。人の船に勝手に入り込んでんだぞ、お前」
「ほっといてよ。あたし今、考え事してるんだから」
「人の船でかよ」
「そーよ。だから、あんたの声なんて聞こえない」
「どうした、キッド」
「不法侵入だ。最悪、武力行使しかねェぞ」
「何だ。そんな、血まみれでどうした、
「キラー…」
「シャワーを浴びて来い。血の臭いがとれなくなるぞ」
「勝手な真似をしてんじゃねェぞ、キラー!」
「あたし今日、失恋したの」
「あァ!?」
「失恋したっていうか、まぁ殺しちゃったんだけど」
「その血か」
「振られた腹いせに殺したってか?どんな女だよお前。怖ェよ」
「それで気づいた事があるのよ」
「お前、俺の話聞いてねェだろ」
「どうした、何に気づいたんだ」
「お前も俺の話は聞いてねェよな。キラー」
「別に好きじゃなかったって事に気づいたの」
「…はァ?(コイツ、何言ってんだ…)」
「というか、もっと好きな人がいる事に気づいたというか。
兎に角、ああ、あたしはこいつの事が好きじゃなかったんだって気づいた時には殺してたのよね」
「大・迷・惑 だなお前。お前という存在が本当に迷惑だぜ」
「…それはまあ、済んでしまった事は仕方がないからな。
兎も角、シャワーを浴びて来い。話はその後にでもゆっくり聞いてやるから」


分かったと言いすごすごとシャワーへ向かったあの女は兎も角、
お前は一体どういうつもりなんだとキラーに詰め寄れば、
大きな溜息を吐き出したキラーに肩をたたかれる。
何のつもりなんだと返せば、お前もこれから大変だな、
なんてわけの分からねェ事を言うものだから、やはりどういうつもりなんだと聞き返す。
答えないキラーは小さく首を振るだけで、
こんな時ばかりは鉄仮面なんざ脱ぎ捨てやがれと、
言いたかったが言えなかった。



喜劇と悲劇の間隙





拍手、ありがとうございました!
第七十二弾はお馴染み、キッド&キラーでした。
主人公が好きなのはキッドだったという話です。

2011/6/20