何もしないだなんて戯言を信じたわけではない。
そんな言葉は愛しているの次に信用出来ない言葉だ。
だから今こうして目を閉じ横になっている状態で、
背後から黙ったまま抱き締めてくるこの男の下半身が
とっくに硬くなっていようが、どうでもいいのだ。


想像以上の力で抱き締められ、何となくだが身体が痛いなあ、
だなんて思っていても口には出さないし、
布の擦れる音と呼吸音だけが重なり合う室内には言葉さえも残らないのだ。
一度やり、二度やり、そうして回数ばかりが増えゆく。


増えゆく間に暗黙の了解は出来上がり、
口を開く方が無粋な雰囲気の出来上がりだ。
スモーカーは口を開かない。だからこちらも開かない。
あえぎ声が関のやまだ。


この関係が何かを残すとは到底思えず、
それでもなくなってしまえば淋しいのだろう、
そう思え、果たして何を奪われたのだろうかと考えた。
言葉一つ交わしていないのに、
心を奪われただなんて口にしてもいいのだろうか。





息をする世界





拍手、ありがとうございました!
第七十六弾もスモーカーでした。
まあ、彼は一言も喋っていない。
2011/11/28