口を開けば嫌味ばかりで、場の空気は毎回凍てつかせる。
只、こちらは俯き口を噤み、
そうしてキラーは困ったように溜息を漏らすのだ。
キラーの何かが気に入らないわけでなく、
只、自分自身から溢れ出す愛情の皮を被った独占欲が彼を攻撃させる。


どうしていつもキッドと一緒なの、口を開けばキッドキッドって、
あたしはあんたにとって一体何なの。


そんな、愚にもならない言葉を並べ、自らが惨めになる道を選んだ。
そうして向かえた局面。初めてキラーが声を荒げた。
大声で叫ぶのはこちらの専売特許だったはずなのに、
まるで驚かない自身に驚いた。


勘弁してくれと、キラーは叫び、
そうして席を立ち、そうして部屋を出て行く。
これはもう戻らないのだと確信してはいた。
自分のやっている事は、頭では理解っているつもりだ。
それなのに心と身体がまるで同期しない。


こんな事を続けていれば、キラーは流石に愛想を着かすに違いない。
それは近い話だ、きっと。
ずっとそう考え、それなのに裏腹な態度ばかりをとる。
恋愛が下手だとか、そんなレベルでなく、頭がいかれているとしか思えない。
あたしの心をここまで混乱させるキラーなんていなくなってしまえという思いと、
あたしを一人にしないでという思いが何故共存するのだろう。


これは執着か。愛でなく、執着なのか。
それならば、それは正しくないのか。分からない。
分からないが、キラーがこの手を離れてしまう事だけは何故か耐え難く、
まるで心がバラバラになってしまいそうで、きっとそれを恐れている。
これ以上、彼を傷つけてどうするのか。
何物も得ず、只、この手からなくなっていくだけだ。


だからこうして、哀れにも彼に縋る。
優しさに付けこみ、捨てないでと縋る。
優しくもズルイ彼は、お前の傷つく姿が見たくないのだと、
これ又エゴに塗れた言葉を吐き出す。
そうして束の間の安堵。


でもきっとそれは過去の亡霊で、あのドアが閉まった時に全ては過去と化す。


崩れる支配





拍手、ありがとうございました!
第七十七弾はキラーでした。
おめでたい数字なのに、
まさかのド失恋夢
申し訳ない
2012/2/11