いつまでも二人このままで生きていくんだって抜かしていた遊びも終わりで、
まあ今思えばそんな思い違いはハナから成立していなかったのだろう。
合間に許された季節はとっくに終わり、
これからは自在に触れられない窮屈な時間がこの身を支配する。
到底信じる価値はないと分かっているはずだ。
それなのにどうして心、奪われた。


奪われた事実が悲しく、それでいて取り返せない事実も虚しく、
宙ぶらりんなまま弄ばれるその心というものを遠くから見る他ない。
好き放題に蹂躙されていると思いはするが、
流石にここまで奪われてしまっては成す術はない為、そのままとしていた。


キッドは、自分のいい時にしかこちらを求めない癖に、
答えないと途端不機嫌になる。
こちらが淋しい時には来ない癖に。
それなのに俺達は二人で一つなんだと、世迷い事を口走るものだから、
多少は馬鹿馬鹿しいと思いはしたものの、心地よかった。
このまま時間が過ぎるのは嫌だったが、
このまま死んでもいいと思っていたのは確かだ。
何も考えたくはなかったから。


だから、まさか二人が離れ離れになるだなんて思ってもいなかったし、
他の誰かの隣にいる未来なんて考えもしなかったのだ。


「馬鹿みたい」
「…」
「本当に、馬鹿みたいね」


シャボンシティで偶然にも顔を合わせた時、
彼女はそう言い、白けた表情を浮かべた。
キッドはキッドで、何も言わなかったが、本当は手を伸ばしたかっただけだ。
変わったのはお前だけで、変われなかったのは俺だけかよと、
言葉にはせず飲み込んだ。


枯れてゆく花のさだめ





拍手、ありがとうございました!
第七十八弾はキッドでした。
前回に引き続き、ここの団は
ロクな恋愛をしていない体に…
2012/3/10