何事かが生じても同じような季節は巡るもので、
どうやらこの冬はどこかで見た事のある冬だと思った。
吐く息は真っ白に凍り、甲板に出る皆が防寒具を羽織る。


季節ばかりは一人前に移り変わるが、
こちらの生活は何一つ変わらないもので、
だからどこかで見た事があると思ったのか、だなんて考えていれば
望まれない客がこの船に足を踏み入れたらしい。
ひりつくような覇気を感じ、視線ばかりを向ける。


「よォ」
「…何の用だよぃ、赤髪」
「いや、近くを通りかかったもんでな」


挨拶でもしようかと思って。
飄々とそう言いのけた赤髪のシャンクスは親父の元へ向かった。
そうしてその背後。
懐かしい夢のような、いや、それよりも煩わしい思い出のような、
完全に受け入れ切れていない感触が全身を這う。


「…久しぶりだな」
「久しぶり、マルコ」
「お前も、親父に挨拶かよぃ」
「そうよ」


素っ気無いのは何も言葉だけでなく、は視線さえも上げない。
これが今の二人の距離で、これまでの集大成だ。
そう思えば幾ばくか虚しくもなったが、今更どうしようもない事だ。
だからマルコも、それ以上は何も言わなかった。


「…雪」


肌を刺すほど凍てついた空気に白い点が一つ、二つと混じり始める。
背を向けたまま近づく事さえ出来ない自身は卑怯なのだろうか。
いや、視線さえ上げないの方がそれは。


つまらない事を考えてしまいそうになり、息を吐く。
目前に広がる海原の上、灰色の厚い雲が果てまで続いていた。





笑えるくらいに愛だった





拍手、ありがとうございました!
第七十九弾はマルコでした。
今気づいたんですが、失恋系というか、
報われていない拍手夢はこれで三本連続…?!
オマケのシャンクス