だからあたしの嘘を暴いたって一つもいい事なんてないのよ
は言うのだし、どうやらそれはまさにその通りなのだ。
嘘と言うものが兎角、目につく性質の為、
少しでもそれを纏えば目につく。
見たくもないのに差し出される。
そのままに出来れば少しは気も楽なのだろうに、
やはり目の前に差し出されると暴いてしまいたくなってしまうのだ。
果たして何が問題なのかは分かっている。



「なーんでそういう事するの」
「何?また、あらぬ疑いでもかけられてるの?」
「っていうか最近、隠そうともしないのはどうして?」
「だって、あんたに嘘は通用しないじゃない」
「いやいや…だからってさ」
「あたしは何も言ってないわよー」



何を言ってもこの調子で、に刺さる言葉を生み出す事はもう出来ないようだ。
出会った頃、関係をもって最初の頃は
多少なりともに刺さる言葉を吐き出せていたようだが、
ここ最近はまるでダメ。
躍起になって嘘を暴こうとしても、
そもそも嘘さえ吐かなくなってしまったのだから打つ手がない。
こんな関係にうんざりしているのはきっと自分の方で、
は何とも思っていないのだ。



「どこ行くの」
「帰るのよ」
「どうして」
「だって、ここはあたしの家じゃないもの」
「帰るの早くない?」



この部屋に来た時と同じ化粧を施したは貘を見ずに言葉を紡ぐわけで、
居た堪れなくなった貘は、そんな彼女の背にしがみつく。
背後から抱き締めればようやくその存在に気づいたようには手を止め、
少しだけ視線を寄越す。



「…どうしたのよ」
「置いてかないでよ」
「甘えたって駄目よ」
「こんなに頼んでるのに」



そうして流れる様にそれなりのキスを交わし、
はこの部屋を出て行ってしまう。
どうやら毎回そうで、最早お決まりの展開と化した。
そんな詰まらない真似を繰り返しつつ今をしのぎ、
出来れば彼女の嘘を暴いてやりたい。
その結果何も残らない事は知っている。



だからこうして詰まらない真似を繰り返して、
は嘘さえも吐かずこの部屋を出ていくのだ。



(みにくいのは)





拍手、ありがとうございました!
復活第八十三弾は弄ばれ系貘ちゃんでした。


2015/11/11