何をしに来たのよと、振り向きもせずにはそう言った。
まるでこちらが来る事が分かっていたかのようで、
どうしても錯覚を消し去る事が出来ない。



若しかしたら未だに思いが通じているのかも、
はこちらをどうにか思っているのかも。
そういう、とても下らない思いが脳内を埋め尽くしているのだ。



三年半振りの再会はまるでドラマチックでなく、
あの頃、隣にいたはずのは見知らぬ男の傍らにいたわけだし
(随分ゲスな勘繰りをしたものだ)
特に言葉を交わしたわけではない。
声をかけようと思っていた矢先、
毎度のトラブルに巻き込まれ彼女は姿を消した。



こうしてこの場所を知りえたのも、
たまたまそのトラブルに関与していた桂の口添えがあったからだ。
あの男はずっと知っていたようで、
どうして今の今まで黙っていやがったのかと、
一言文句でもいいたいところではあったが、
お前のせいだろうと窘められそうでやめた。
あの男は一連の流れを知っている。



「…元気してた?」
「…」
「おーい」
「…」



今更だとは怒るだろうか。
何を今更、お前が手を伸ばすのかと。
そんな資格はないはずだと。



「髪型変えた?」
「…」



どういう言葉をかければ返事が返ってくるのかさえ分からず、
だけれど口を閉じる事も出来ない。恐ろしいから。
こと、沈黙が恐ろしいからだ。



ここまでのこのことやって来て、
今更何を恐れるのかという話なのだが、
ここで手厳しくあしらわれる事が恐ろしい。


禊はまだか。
まだ、終わらないか。



「…俺が悪ィってのはよ、分かってるんだ」
「…」
「分かっちゃいるが、なぁ」



どうしようもないのだと銀時は言うのだろう。
背後から抱きすくめられ、言葉を失った女を前に。
勝手に姿を消したはずのこの男は、
ようやく失せた火種をいとも容易く燃え上がらせる。
どうせ掴んでも掴みきれないような男なのだ。



回された腕に力がこもり、痣の様に罪がまた、刻まれる。


春に目覚める方法









拍手、ありがとうございました!
復活第八十五弾は初めての銀魂から銀時でした。
しかも暗い、、、


2017/2/27